第2話 初めての戦い

レイは先に走り出したトロピ達を捕まえてゲンコツを食らわせた後、競争で草原に一本だけある木の元まで走った。


「ハァハァ、にしても、レイ、速すぎだろ」

「だよなトロピ、ハァハァ、俺もそう思う」

「置いてくなんてひどいよー!もう走れない‥」

「なんでこんなに差が出るんだろうな」

「レイって実は戦闘職なんじゃないの?」


とニーナは問いかけた。


「確かにそれあり得そうだよな」「てことは俺は戦闘職じゃないってことかよ‥..」

「分かんない、俺は物心ついた時からばあちゃんに育てられてるから、両親のことはよく知らないんだ、ばあちゃんも両親のことはあまり触れないんだ」

「そっか、でも、もし本当に戦闘職だったらどうするの?」

「うーん、どうせそんなに強い職業じゃないだろ、大きな町とかの騎士の子供でもないしね、強くなければ王都に行く必要も無いし、村の警備隊にでも入るよ」

「「もったいねー」」

「なんだよ」

「だってよ、父ちゃんが職業が弱くてもステータス上限が高ければ強くなれるって言ってたぞ、ステータスはG~Aまであって、もし一つでもCを越えれば凄いんだって」

「じゃあトロピ、農民でも上限が高ければ王都に行くのか?」

「ナグ、そんなわけないだろ、だいたい農民なんてせいぜい高くてもFだぞ」

「そんな~」

「もう、明日一緒に鑑定行くんだから、そんな話は明日でいいでしょ、それより早く遊ぼうよ!」

「「「はーい」」」


皆で鬼ごっこや、木の枝を使って騎士団ごっこをして、日が傾き、辺りがだんだん暗くなってきた頃


カサカサッ


「?」

「ニーナ、どうした?」

「今、あそこの茂みに何かいなかった?」

「?、どこだ」

「あそこ」


ニーナが指差した場所は、草原や村を囲んだ柵の外側にある森の一端、そこから勢いよく何かが飛び出してきた。


「「!!!」」

「皆逃げろ!スモールボアだ!」

「えっ!なんで!あの柵には魔除けの魔法がかけられてるはずなのに、なんでこっちに来るんだよ!」

「わかんねーよ!それより早く!!」


四人は必死に村のほうに駆けていく、スモールボアは体長およそ1m、口元には10cm程の牙が生えた魔物で、ランクはG、凶暴で足が速いため見つけたらすぐに見つからないように逃げなければいけない。もし仮に見つかってしまえば、勢いよく突っ込んでくる上に、あの牙を体に突き刺されればただではすまない。

スモールボアはレイ達に気付くとすぐに向かってきた。


(このままじゃまずい!追い付かれる!)

その時、


「あっつぅ!!!」

「トロピ!!まずい!」


レイはその場で急旋回しトロピの前へ、

そして前にはスモールボアが迫って来ている。


(俺がやるしかない)

「トロピ!立て!早く!!」

「う、うぉう!ってお前なんでそこで立ち止まってんだよ!早く逃げなきゃ!」

「無理だ!このままだと間違いなく追い付かれる!!だったらここでこいつをぶっ叩いてやる!」


そう言って持っている木の棒を握りしめる。


「ヤバイって!もう来ちゃ『ブモーー!!!』」


その時、レイには、白い光がスモールボアの額に見えた気がした。


「ここだ!!」


レイはスモールボアとぶつかる直前に左に避け、右上段から棒を振り下ろした。ゴキッ!!っと手に頭蓋骨

をかち割った感触と共に木の枝が砕ける。


『ブルォ....』


ドシンっとスモールボアが倒れた。


「倒し…た‥?」

「…あ、ありがとう、レイ。お前が来てくれなきゃ‥‥」

「あの光は一体‥」「レイ?」

「ん?あっああ、それよりトロピ、ケガしてないか?」

「いや、俺は平気だよ、それよりレイは「あそこ!!」あっ、ニーナ達も戻って来やがった」

「お前ら、一体どうしたんだ!」

「でっかい猪が!!「えっ!魔物が出たのか!どこだって‥」」

「「「‥‥‥」」」「これは、二人で倒したのか?」

「ちげぇよ…、レイが一人で倒したんだ!」

「‥こりゃすげーや…、レイ君、お前、間違いねーな…」

「すごいや、レイ!でもこれってどうするの?」

「レイ君が狩ったんだから君が決めるといい、スモールボアは毛皮と魔石は売ればお金になるし、肉は食べれるからね」

「そうなんですね、じゃあ皆で食べようか」

「やった!久しぶりにお肉が食べれる!」

「久しぶりだな~、じゃあウチに持って帰ってさばいてもらおうぜ!」

「でも、どうやって運ぶの?」

「んー、よいっ…しょ!」

ズルズル

「俺が引きずって行くよ」

「レイはホントに力持ちだね~‥‥」

「やっぱり化け物だな」「だな」「「「アハハハハハッ」」」

「おーまーえーらー!」



スモールボアを切り分けてもらった後、トロピの家の前で


「明日って皆で集まってから教会に行くの?」

「「そうしよう」」「そうだね」

「分かった、じゃあまた明日ね」


四人はそうして帰路についた。








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