第51話王女の縁組5
「殿下はセーラ嬢と婚約解消などするべきではありませんでした。その事は殿下自身が
宰相の言う通りだ。
言い訳になるが、当時はそのような事を考える余裕はなかった。
「本来であれば殿下は廃嫡されていてもおかしくなかったのです」
「そうだろうな。私に弟がいればとっくの昔に廃嫡されていた筈だ」
宰相が少し驚いた表情をした。一瞬だけだったが見逃さなかった。それ位はバカでも分かる。一人息子だから、私の代わりは他にはいない。その強みを利用していた。
宰相は憐憫の籠もった目で私を見ると、深い溜息を吐いた。
「ご理解していらっしゃるなら、もうお分かりでしょう。何故、リリアナ王女殿下に縁組の話が持ち上がらない理由を……」
「私がセーラを……「コードウェル公爵夫人です、殿下」……」
宰相に訂正された。
そうだな、人妻のセーラを呼び捨てにはできない。
「……コードウェル公爵夫人を蔑ろにして別の女性と婚姻したせいだな」
「それも只の婚約ではありません。『王命』での婚約でした。高位貴族の殿下に不信感を持っています。王家からの申し入れで『王命』まで使っての婚約者をいとも簡単に切り捨てる事が出来る殿下を信用する高位貴族はおりません。そのような行動に移させた王太子妃に対しても同じ事。王女殿下と婚約をした処で『別に愛する人ができた』と何時反故されるか分からないという思いがあるのです」
「それだけではないだろう?」
「ご理解されているのですね」
「ああ……リリアナとの婚姻は相手にとって旨味がない。王太子の娘といっても母方の元男爵家。しかも既に潰れている家だ。これから先、サリーに子供が出来なければ私の次は公爵家の誰かが即位する事になる。皆はもうその誰かを王と見て行動しているのだろう」
だからこそ後ろ盾のなくなるリリアナを然るべき家に嫁がせたい。
私が生きている間は大丈夫だろうが、その後は?
「私以外にリリアナを守ってくれる存在が必要なのだ」
「……仮に王女殿下が嫁げたとして、その家族に大切にして貰える保証はありません。寧ろ、厄介者扱いされる可能性の方が大きいのです。王女殿下の事を思うならば修道院にお入れするべきです」
「修道院はダメだ!」
「何故ですか?高位貴族は王女殿下に好意を寄せる事はありません。婚姻が出来ても仮面夫婦になるのが関の山ではありませんか!それとも殿下は実の娘が白い結婚でも構わないと仰るのですか? 双方共に不幸しか産まない結婚です」
「それでも……修道院はダメなんだ」
「
「……リリアナにとっては安全な場所ではない。あそこには下位貴族の令嬢や夫人がいる」
恋に浮かれて、自由に振る舞った結果だ
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