第43話帰還2


 いつの間にか貴族達の挨拶が終わっていた。

 

 

「ルーデン侯爵夫人」


 サリー!?

 隣にいた妻が夫人達の元に駆け寄っているではないか!



「ルーデン侯爵家には素敵な息子さんいると聞いたわ」


「息子ですか?」


「そう!とってもカッコイイって評判になっているのよ」


「お褒めくださってありがとうございます。まだ十二歳の子供ですのに」


「十二歳!?」


「はい」


「な、なんでよ! 噂じゃあ六ヶ国語を話せて来年には帝国に留学するって聞いたのに!」


「はい、その通りです」


「はぁ!? 十二歳の子供なんでしょう? 話を盛っているの?」


「ほほほっ。相変わらず王太子妃様は他に類を見ない発想をされるのですね。ルーデン侯爵家は外交を重視する家柄で、当然、子供達には諸外国の言語や文化を深く学ばせます。十歳になる娘も三ヶ国語の教育が修了しております」


「……やだ……がり勉?」


「王妃様は大変面白い事をおっしゃいますわ。高位貴族の子女ならば最低でも三ヶ国語を話すのは常識です。王太子妃様も妃教育を受けられたので御存知でしょう」

 

 

 優雅に微笑むルーデン侯爵夫人の目は冷ややかだ。出来が悪く公式の場に出る事を禁じられたサリーに対して辛辣だ。彼女は学園の後輩でもあった。二学年下で、セーラを慕っていたのを覚えている。

 

 

 

「……~~っ。り、留学と言えばハイド公爵夫人の息子さんも帝国に留学されているとか……」


「はい、去年から帝国に留学しておりますわ」


「確か大学に通っていると聞いたのだけど……その、やっぱり十二、三歳なのかしら?」


「まぁ!流石に十二歳で帝国大学に入学するには無理がありますわ。私の息子は先月で二十歳になりました」


「え!十九?」


「はい」


「それじゃあ、王女とも年回りがいいわ!」


 どうやらサリーはリリアナの婿候補を探しているようだ。

 しかし、ハイド公爵家は確か……。

 


「ハイド公爵子息は帝国の公爵令嬢との御結婚の日取りもお決まりになったそうですね。おめでとうございます」


 隣にいた夫人からの言葉にサリーは酷く動揺していた。今からハイド公爵夫人にリリアナの事を話そうとした矢先だ。頭が追い付いていない。サリーにしたら娘の良さをアピールして婚約に持っていきたかったに違いない。それが無理なら長期休暇を利用して公爵子息が国に戻った時にでも見合いさせたかったのだろう。



 


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