第14話過去11 ~侍女side~
「マックスに言いつけるわよ!」
王太子妃は何かにつけて王太子殿下の名前をだしてくる。
しかも「マックス」って……。愛称呼びは母親である王妃様以外しなかった。元婚約者のセーラ様でさえ愛称呼びはなさらなかったのに……。
「私は元々男爵令嬢なのよ!出来ないのは当り前よ!」
二言目にはコレを言い放つのだから溜まらない。
お陰で王太子妃付きの侍女の配置替えが頻繁に起こる始末。配置変更のスパンが段々短くなってきているのも気のせいじゃあないわね。それも仕方ない。そうでもしなければ王太子妃付きなんてやってられないもの。
ベテランまで匙投げる程なんだから相当だわ。
本当になんでこんなのが王太子妃なの?
王太子殿下はこの女のどこが良くて結婚したのかしら?
謎でしかない。
やっぱり顔?
好みの顔だったから?
セーラ様とは違ったタイプの美少女なのは確かだわ。セーラ様にはない豊満な胸は男にとっては魅力的なのかも……。
それともセーラ様を見てきたから真逆の女を好んだとか?
貴族にとっては珍しいタイプである事には間違いない。
洗練された女性ばかりを見慣れているから毛色の違う女がお気に召したのだろう。
私には理解できないけど。
王都民からは人気の王太子妃だけど、それは本人をよく知らないからこその人気に過ぎない。
身分を超えた愛のある結婚――
そのフレーズに熱狂しているだけ。
王太子妃の本性を知ったら熱も冷めるでしょう。嫌でもね!
教育係達が王宮を去った後、あの王太子妃は寝室に引き籠っている。
「教師達が辞めていったのは私のせいじゃないわ!」
この王太子妃は何を言っているの?
自分からクビにしておいて。
「私に合わせない教師達が悪いんだわ!」
あんたに合わせていたら妃教育は死ぬまで終わらないでしょうよ!
今日も心で王太子妃を毒づきながら職務を全うする。
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