最終話 ずっと大好きだよ



なんだか寒いなぁ、でも暖かいなぁ。


「タロウ。がんばって、ミヨがもうすぐ来るから。」


ミヨって誰だろう。

なんだか、かわいいな。ポカポカするな。


おっきな窓から入る暖かさが、ボクのからだを包み込む。

目があまり見えないから、お外がどうなっているか分からない。

どんなキセツなのか、分からない。


「タロウ。タロウ。頑張ってくれ。頼む。無理して生きてくれとは言わない。ただ、お前の大好きなミヨにだけは、ミヨにだけは会ってくれ。」


ミヨってなまえ?

じゃあどんな人なんだろう。


きっとかわいくて、おっきいけど小さくて、ボクがいないと眠れないんだ。

転ぶとすぐビイビイって言って、ボクが舐めてあげると、うれしそうにするんだ。


カランコロンってベルがなって、何処かで扉が開く音がする。


大きな音をたてて、誰かがお部屋に入ってきた。


「ごめん。遅れてごめん。」


キレイなお姉さんがボクの顔をのぞき込む。

さっき入ってきた人なのかな。


お姉さんの顔はビチャビチャで、すっごく悲しそう。


どうしたの、そんな顔しないで、ボクが何とかしてあげるから。


「ごめん。ごめんね。全然帰って来れなくてごめん。寂しい思いをさせちゃって、ごめん。」


悲しいの?どうして?

ボクはこんなに幸せなのに。


キレイなお姉さんはボクを撫でる。

お顔がビチャビチャなお姉さんは、ボクの好きな撫で方をしてくれた。


ボクの大好きな声。ボクの大好きな匂い。

ボクの大好きな、大切な。


大切な


ねえ、ミヨちゃん。

ボクが守ってあげるから、大丈夫だよ。


ミヨちゃんが辛い時は、ボクが傍にいるから。


ボクはミヨちゃんの手を舐める。

味がよく分からないけど、何も出来ないけど、ぺろぺろ舐める。


「…………思い出してくれたの…?」


ミヨちゃん、ミヨちゃん。


一緒に寝ないと眠れないんだから、今日は一緒に寝てあげる。


一緒にお散歩に行こうね。ボクが特訓してあげるから。


一緒にご飯を食べよう。ボクの分もちょっとだけ分けてあげる。


すごくすごく眠いから、一緒にお昼寝しよう。

それで、起きたらいっぱい楽しいことしよう。


ねえ、ミヨちゃん、ボクのなまえ呼んで。


大好きな、ボクのなまえ呼んで


「タロウ、タロウ。タロウ。大好き。大好きだよ。ずっと大好き。愛してるよ。タロウ。ありがとう。ありがとう。」


ボクも大好きだよ。

ミヨちゃんのこと、ずっとずっと大好きだよ。


ずっとずっと、大好きだよ。


おやすみ、ミヨちゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ボクとミヨちゃんの二十年 お好み焼きごはん @necochan_kawayo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ