三話 慰め



ミヨちゃんは最近、カリカリしてる。


ボクのカリカリご飯の事じゃなくて、なんだか怒りっぽくて、イライラしてるってこと。


コウコウセイになって少ししてから、ミヨちゃんはカリカリするようになった。


ご飯も一緒に食べたがらないし、パパとママに大きな声で何か言ったりしてる。


パパとママは悲しそうで、ボクも悲しい。


ある日、ミヨちゃんは大きな声を出して、部屋にこもった。


ママが呼びに来ても、「うるさい!」って出てこない。


ミヨちゃんはどうしちゃったのかな。

何か変なもの食べちゃったのかな?


ミヨちゃんのお部屋の扉を叩く。

カリカリ爪の音をたててアピールする。


すると、ミヨちゃんのお部屋の扉が開いた。


真っ赤な目のミヨちゃんが、扉を開けてくれた。

なんでお目々が真っ赤なの?やっぱり、体調がよくないの?


ボクがお部屋に入ると、ミヨちゃんはベッドの上で丸くなった。

スンスンって音が、ミヨちゃんからする。


ボクはベットに上がって、ミヨちゃんの隣に座る。

ピトッておしりもくっつける。


「……タロウ。私ね、本当はあんなこと言いたくないの。」


ミヨちゃんが喋り始めたから、ボクは頭を左右に動かして、ちゃんと聞く。


「でもね、なんだかイライラ〜ってしちゃって、自分が抑えられなくて、つい怒鳴っちゃうの。タロウが居るのに、大きな声を出しちゃうの。こんな自分が嫌なの……」


ミヨちゃんのお顔が水っぽい。

ビチャビチャなお顔は初めてで、ボクは不思議に思う。


「ねえ、タロウ。私ダメだね。……どうしたらいいんだろう」


でもボクは分からなくても、ミヨちゃんが悲しいのは分かる。

ミヨちゃんが苦しいのは分かる。


ボクはベッドから飛び降りて、急いで、ママがご飯を用意してくれるところに行く。


ママの真似をして扉を開くと、中が見えた。

火が出る所と、いっぱい扉がついてる壁とか、水が出るところとかがある。


その中でも、あそこだ。

山のように高いあの場所に、入ってる。


ボクは頑張った。

火が出る所を気をつけて、水が出るところで肉球が冷たくなって、色んなところに乗って……


ボクは頑張った。


ボクはようやく手に入れたぞ!


お宝と、ボクのお気に入りのおもちゃも持って、急いでミヨちゃんのお部屋に行った。


まだ開いてる扉に体をねじ込んで、暗いお部屋の中に入る。


ミヨちゃん!ミヨちゃん!元気だして!


「……タロウ、戻っ」


ミヨちゃんは僕の姿を見て、ビックリした顔をする。


ボクはポトッと、手に入れた物を落とす。


「タロウ、おやつ、袋ごと持ってきちゃったの?ていうか、取っちゃったの?」


ボクの大好きなおやつと、ボクの大好きなおもちゃ!


悲しいなら美味しいものを食べよう!

苦しいならいっぱい遊ぼう!


「タロウ、元気づけようとしてくれてるの?」


ボクはベッドの上におもちゃを置く。

これはね、音が鳴るんだよ。カミカミすると楽しいよ。


おもちゃの紹介をしていると、ミヨちゃんのお顔はさっきよりビチャビチャになった。


悲しいの?大丈夫?おやつ食べる?


「ありがとう。タロウ、ありがとう。」


ミヨちゃんにギューって抱きしめられた。

ギューってするのが好きだね。好きなだけしていいよ。


ボクをワシャワシャ撫でるミヨちゃんはうれしそうだった。


もう悲しくなくなった?


辛かったらボクが慰めてあげるからね。大丈夫だよ、ミヨちゃん。

ボクが守ってあげるからね。


その日、ボクとミヨちゃんはおもちゃに囲まれながら、おやすみした。


朝起きるとミヨちゃんはパパとママに頭を下げて、何かを話していた。


パパとママのお顔も、ちょっとビチャビチャになってた。なんでだろう?

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