第2話

「おはよう」

 

 朝起きて、朝食を食べ、身支度をして、学校へ行って、授業を受けて、お弁当を食べ、部活をし、下校して、夕食を食べ、風呂に入り、着替えて寝る。


「おやすみ」


 それだけの毎日、変わらない毎日。


 記号的に受験や試験などが挟まれていたり、時には事件や事故に巻き込まれたりもすることだろうが、しかしそれだけのつまらない人生の繰り返しであった。


 色彩がない。


 正直最初は、まあでも別に大したことはないだろう――と、高を括っていたところがある。


 別に楽しいことがなくとも、感動しなくとも生きていける、と。


 その通りだった。


 生きていくことは、できる。


 ただ――楽しくはない。


 それだけであった。


 それだけなのに。


「……死にたい」


 死にたいくらい、辛かった。


 娯楽がない――何もない。


 無軌道に人生を生きるしかない。それがこんなに苦痛だとは露ほどに思わなかった。


 波風の立たない、平穏で普通の人生。


 どこにでもいる平凡でありふれた――なんて、それこそフィクションの上での存在である。


 皆はどこかにいて、非凡で、ありふれていない、かけがえがない。


 そしてそれぞれが個々で何とか生きる理由を模索しているのだ。


 その理由の欄に記入されるべきものが――感動、楽しいことなのだった。


 僕にはそれが欠落している。


 


 別に精神的に負荷がかかっている訳でも、肉体的に疲弊している訳でもない。


 にも拘わらず、毎日僕という存在そのものが、消耗していくようだった。


 精神でも肉体でもなく。


 魂がすり減っている、とでも言おうか。


「おはよう」


 朝、目が覚めた。


 今日もまだ僕は生きている。


 なぜまだ生きているんだろう。


 分からなかった。


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