4_2019年2月20日
「こんばんは。クロ……久しぶり」
「お前、すっげぇ顔色悪いけど大丈夫なのか?クマが酷いぞ」
「よく寝れなくて。気にする事はないですよ……」
上手く薬が効かなくてここに全然来られない。
ここに来るためにもっともっと眠れるように量を増やした、別の物と併合して飲めば寝られるんじゃないかと思って色々と用意した。そのおかげが無事にここに辿り着くことができたから結果オーライ。
「クロは僕の事を忘れたりしませんか」
誰かに忘れ去られることがとても怖い。
大切な人が離れていくのが怖くて怖くてたまらない。
なんだか最近自分がおかしい。
現実世界で勝手に涙が溢れたり、何も手に付かなくなったり、物凄く消えたくなったりと自分が分からなくなっている。
「忘れたりしないぞ。スイは俺の“マブダチ”だからな。けど、体を壊すようなことをするのは良くないぞ。いくら何でも今日のは……」
「それならよかったです。クロ、今日は辿り着いた場所でゆっくりしましょう。ちょっとだけ、疲れたんです」
「わ、分かった。俺が相談相手になってやるから全部話せよ!」
「ありがとう」
何もない白い道を進む。
現れたのは小さい頃、よく通っていた祖父母の家の庭。
「綺麗だな」
「僕もそう思います……綺麗」
庭の真ん中にあるソファに2人で腰掛ける。
「このまま一生ここで居れたら……どうやったらクロのところで一生居れますか」
「ここに通えばいつか……でも死ぬかもしんねーよ」
「半々の確立ぐらいです?」
「9割は死、1割はここ……じゃね?」
「僕は運が悪いので1割を引き当てるのは無理そうですね」
「そもそも試すな馬鹿。スイが死んだら俺は悲しいぞ」
「そう言ってくれるのはこの世でクロだけですよ」
僕に優しい言葉をかけてくれるのは彼だけ。
だからずっと、ずっと、ずっとずっとずっとここに居たい。
だから明日もお薬を使う。
【ひゃくごじゅうのあめをくちにいれ、少年は夢のせかいに沈んでいく】
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