3_2018年12月10日






「あ。やっと来れた……こんばんは、クロ」

「眠りネズミ、最近見てなかったと思ったら何があったんだそれ……」



困惑した声でクロは僕に指を指す。

僕の左腕は血だらけでだらだらと血がまた流れている。クロはそれを見てビックリしたみたい。



「今日。実習で怪我したんです。それだけなんで気にしないで」

「いやいやいや気にするわ馬鹿!こんなにざっくりいっちゃって……絶対跡残るぞこれ、なにしたんだよ」

「別にただ一瞬の気の迷いで…。現実ではちゃんと絆創膏で傷口を止めましたから大丈夫ですよ、大袈裟ですね」

「起きたら病院行けよ?」

「大丈夫です」



絆創膏で塞いだはずの傷口はこっちだとぱっくりと開いてる。

手当したのに反映されてなかった。



「ぱっくりいっちゃってるのに大丈夫とか感覚麻痺ってんじゃねぇの!?寝てる暇あったら病院に__」

「いいの。大丈夫だから早く行こう、ずっとここに来れなくて寂しかったんです」



ずっとここに来たかったけど寝つきが悪くてここに来れなかった。いつも使ってる薬が売り切れであれ以来ずっと寝不足を極めてる。やっと薬が届いたから久々にこうして夢の世界に来れた。どれだけここに来たかったか…。



「さ、行こう。クロ」

「お、おお……」



心配するクロの腕を引っ張って歩いて行く。

今日はちゃんと薬を飲んだからいつもの様にクロといられる。久々に一緒にクロと入れるから楽しみだ。


しばらく歩けば水族館に出た、大きな魚が水槽の中を自由に泳いでいた。



「うお!魚じゃん!!美味そ!」

「その感想、絶対現実世界で言っちゃダメですよ」

「あっ……わりぃ」

「いいですよ、夢の世界なんで」



クロらしい発言に思わず笑みがこぼれる。



「言われた通りに出かけておきました。他にも出かけたんでしばらくは楽しめると思う……はず」

「マジで!?ありがとー!!ずっとスイに着いてくわ!!」


嬉しそうな様子のクロ。

遠出した甲斐があったとほっとした、1人で水族館に行くのはハードルが高かった。


2人で水族館を回る。

ちゃんと夢に反映されるようにイルカやペンギンのショーを見たし、お土産コーナーも回った。ご飯はあまり食べられないからソフトクリームだけを買って食べたからソフトクリームだけは買えると思う。


しっかり見たおかげでどの水槽も綺麗でふれあいコーナーもしっかり再現してて楽しかった。



「ソフトクリーム……食べます?」

「食べる食べる!!あれだろ?早く行って食べようぜー!」

「ちょ、待って!」



走り出すクロの後を急いで追いかける。

久々に笑ったし久々に動いた、やっぱりここはあったかいな。



「早く来いよ、スイ!」

「分かったからそんなに急かさな____」




突如、プツンと世界が切れる。




「あ……きれ、た…………」



目を開ければ真っ白い天井が目に入る。

黒と白の見覚えのある布団の上に転がる自分。カチカチと時計の音が響く。



「足りなかったか……」



効き目が薄くなっている、途中で夢の世界が終わらないように調整しなきゃ………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る