第151話 桜時、剣の少年


 屈託のない、祖父が品位ににおわず銀髪の前髪を揺らし、光輝さを保たれながら僕に慰めた。


 僕は祖父にも慣れない敬語を使わないといけないのだろうか? 


 月日は早く立ち去り、屋敷でのマナーや振る舞いも見様見真似で慣れていく。


 


 屋敷にいるときは主に部屋に籠って勉強したり、音楽を聴いたり、本を読んだりしていた。


 父さんが子供の頃に使っていたという部屋には多くの蔵書があり、好奇心は飽きず、学問的な追及心が満たされていたからだ。


 部屋の中で見上げた、――永遠の春の夢の中で、花曇りの下、僕は一人剣の舞を捧げている。


 


 花万朶の樹の下に一輪の可憐な菫が秘め事のように咲いている。


 乱視に陥りそうになりながら視野狭窄の中、双眸を大きく見開き、白銀の刃を大きく宙を切らせ、抜き身を凛然とした花冷えに立ち向かう。


 


 はらはらと薄桃色の花びらが乱舞するかのように、この手の甲に舞い落ちる。


 僕らがただひたすらに立ち向かうのはこの世に巣くう煩悩と、この身を蝕む懊悩だけだ。


 


 鏡花水月、カサカサになった苦悩さえも綺麗さっぱり汚れ落とせたら、と不意に願う。


 菜の花も連れ添う桜時、僕は華麗な陽春の空の下、神楽を舞うのだった。


 

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