第123話 朝顔
あんなに忍び合い、ついには黎明に結ばれて、暇さえあれば、いつも同じ双子のような二人だった。
あんなに長い時間いれば、愛の結晶が生まれてもおかしくはなかった。
「義彦さん、私ね、お腹の中に赤ちゃんがいるみたい」
草木が枯れ果てた山眠る玄冬に懐妊を告げられたとき、とうとう、僕は隠し持っていた僕の一族の概要を話すしかない、と追い詰められた。
君にもし、僕の一族の家系図を広げたとしたら、君は僕を今までのように愛してくれるだろうか?
そのお腹にいる子がもし、男児だとしたら、とふと考えた。
男児だとしたら、その子は僕の一族の血を引く、宮家の後継者になる可能性もあるのだ。
皇位継承者は現代、年々少なくなり、喫緊の課題として、禁忌的且つ、重篤な政治的に関係する。
天照大神・宿神を崇め奉る、僕の一族の血を引いた、赤子が君の胎内に宿っている、という事実に僕は怖れを為した。
僕の代には関係なくとも、この子には関連するかもしれない。
太古の時代から脈々と受け継がれた、最古の王朝の末裔である、僕の子を宿した君に何と声を掛けたら良いのか、判断に迷った。
「私ね、産んで育てたい。学校を辞めないといけないけど、見習いしながらでも国家試験を受けられるみたいだし、赤ちゃん育てながらでも何とかやれるみたい」
君はお腹を撫でながら恐る恐る言った。
愛おしそうにそのお腹の胎児に声を掛けた。
「君が簡単に思うほど、その子は普通じゃないんだ」
冷徹に告げた僕に君の瞳孔が萎れた真昼時の朝顔のように曇った。
「普通じゃなってどういうこと? 産んでほしくないの?」
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