第116話 凪
少女の周りに日輪が回った。
少女は突然の偏狂にあまりにも呆然となっている。
「うら若い乙女です。奇々怪々の八岐大蛇の生贄にでも」
姫が少女をかっさらい、僕は咆哮した。
「辞めろ!」
少女は突然、宙づりになり、手足をばたつかせ、危機回避しようと姫に逆らった。
その助けようとした弾みで僕が抱えたバックから白い光が見えた。
僕は落とすまい、と咄嗟にそれを拾おうとした。
姫がほんの数秒で少女を落下させ、その星光を掴んだ。
「これは……。ああ、あの子の末裔の。ほほほほ、あなたはとうとうご存知でしたの」
姫に落とされた少女は息が絶えるように悶えていた。
「君は何がしたいんだい?」
これ以上、不公平な不幸が凪のようにまっさらになるまで、鎮まり給え、この穢土で。
「もし、あなたが私に要求するのならば、おひとつ提案があるとよし?」
姫のけったいな嘲笑に僕は打開策を探るように縋った。
「何でもいい。みんなが助かるのなら」
「では、私を閨で慈しむように常闇で下紐を解いてくださいまし」
姫の要求はあまりにも陳腐に思えたが、大火が迫る屋上では深く考えに及ぶ余地もなかった。
「君が僕を望んでいるならばそれでいい」
僕が言辞を言い終える前に視界は晦冥に満たされ、暗転はからくり時計が間違って左巻きするように歪んでいく。
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