月華東京

第98話 赤い眼


 嗚咽を派手に繰り返す、彼女の一人娘を引き連れて僕は自室のアパートに帰った。


 少女は赤い眼をハンカチで隠しながら泣きじゃくり、とてもじゃないけれど温和な状態ではなかったから、僕の家に避難させたというわけだ。


 


 僕はオンボロのアパートに到着するなり、少女を家へ上がらせ、お腹が空いただろうから、ストックしてあった、チキンラーメンに生卵と刻んだ葱を入れ、お湯が沸くとその上にかけた。


 少女は僕がいつも使っている、小さな折り畳み式のテーブルの前に飄然としながら蹲っている。


 


 大雨が降るたびにあちこちの屋根の隙間から雨漏りする、陋劣なアパートなのだが、少女をあのまま、母親である北崎ゆかりの元へいさせたら、さらに傷口に塩を塗らせることになるからこれでいいんだ、と僕は僕に言い聞かせた。


 僕と少女は同年代なわけだし、未成年連れ去りの罪にも問われないだろう。


 三分立経ったので、僕は二人分のチキンラーメンとシーチキン缶と戸村の焼肉のたれを置いて、彼女の怯えた表情をよそに食べ始めた。


 チキンラーメンの上にシーチキンを載せて、戸村の焼肉のたれを少しかける。



「食べなよ。お腹が空いただろうし」


 僕がごく簡単なインスタントメニューを食べていると、彼女も食欲には勝てなかったのか、恐る恐る窺いながら食べ始めた。


「あんたって、前に代々木公園で会った子でしょう」


 彼女の一声がそれだったので僕は首肯した。


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