第90話 アングラのシナリオ
YAHOOニュースによく垂れ流しするような、嘘で固めた、不幸なニュースの記事を読むと、僕の家庭内事情よりも優遇されているじゃないか、と僕は本音のところ、唾棄したくはなかった。
そういう不幸な、自称・マイノリティーが後に短期間のうちに、難関大学に現役合格し、進学したのち、その言論界隈で偉そうに自分の主義主張を唱えているなんて、腐るほど聞いた話だったから。
本当ならば、そんな悲惨な生活を送っていた、少年少女が成長するにつれ、多くの裏社会のダークサイドに搾取されて、反吐のような毎日を送らされているほうが、俄然、真実味があるとは思うけど。
僕は値踏みもされない、清貧の書を偽っていた、とでも彼女は物申すのか。
分からない。
だって、僕の母さんがその決して、冗談じゃない、B級映画のアングラのシナリオ通りの人生を今でも送っているから。
「それに対して、あなたはその家柄に生まれたというだけで、天から勲章をもらえるばかりではなく、普通の人ならば、一生かかっても得られないような利得を、その血筋のおかげで会得できるのよ」
僕の血筋がそれほどまでに尊く、利権に絡んだとしても、僕が歩んできた悲惨な人生の道程が消えるわけではない。
どうでも良かった。
僕が家族の絆を断ち切っても、何も不自然はない。
母さんを毒親と罵っても、世間様は留保もせず、煽情的な認定書を足早に提出するだろう。
喜んで、世間様という怪物は、僕のこれまでの経歴を憐れみ、見世物小屋に隔離された弱者として消費し、僕をどこまでも、地獄の淵へ突き落していくだろう。
そのマイノリティーとしての悠長だったはずの特権を持った僕は、YAHOOニュースに仕切りなしに登場する、トラウマティックなニュースのメインとしての、いびつな誇らしささえあった。
このニュースに登場する、弱者よりも僕は一段階も不幸で可哀想なんだ、と反面教師の逆をやっていた。
可哀想な順位を勝手気ままに順位付けし、体たらくに思い込んでいた。
YAHOOニュースの、三面記事にあるような複雑性PTSDを患った、という虐待サバイバーのインタビュアーは、遥かに僕よりも恵まれていたし、これ以上にない不幸のお荷物を背負っていると自覚していたから。
「私のポリシーとして、譲れないのは、天皇制は廃止すべきだ、とどの言論誌にも、見解を示している」
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