第48話 惨劇の地
多くの人が銃撃戦に遭い、早送り再生のように次々と通行人が撃たれている。
有無を言わさず、光線銃で撃たれた人々はその場で斃れこみ、息を絶やしていた。
闇空から爆音が聞こえた、と思い、僕は咄嗟に頭上を見上げると、大きなジュランミンの銀翼が夜空を貶しながら都市を撃墜しようと企んでいた。
声にもならない悲鳴が渋谷のスクランブル交差点を駆け抜け、今、まさに平和だった都市部は戦争の火蓋が切られていた。
「君は何をしたんだよ!」
これも姫の奇術の仕業なのか。僕は激怒に駆られ、姫を問い詰める。
「こんな惨事を促してはいけない! あんまりだ……」
小さな渡り鳥が湖上から一斉に飛び立つように、無辜な市民が命からがら逃げようと渋谷駅の構内へ立て込み、多くの人が将棋倒しとなり、鈍痛が聞こえる。
その鮨詰め状態になった人々さえも無情な銃撃は続いた。
「いいから、辞めろよ! ああ」
姫は僕を嘲弄するように渋谷の夜空に向かって宙に浮いたまま、注視している。
「あなたは選ばれし者ですから。大丈夫ですよ」
不思議なことに気付いた。その銃撃は僕を避けるように曲がり、僕がどんなに突進しようと僕にはその銃弾は当たらなかったからだ。
なぜか、その銃弾は僕を避け、代わりに僕の斜交いの人間に当たり、血飛沫が無情にも上がる。
悲鳴にもならない胴間声が耳をつんざく。
辺り一面、惨状が繰り広げられ、死屍累々、血を咽喉から吐き出す人、脇腹に砲丸が当たり、両手で塞ぐ人、この場の状況を飲み込めず、泣き喚く人、右往左往しながら逃げ惑う人、頭から血を流し、その僕の前で逃げ帰った人は顔が半分裂けていた。
遠方から火災警報器が、けたたましく鳴り響く爆音が聞こえる。
砲撃の冷酷な、皮膚を切り裂くような音が多数の市民を撃ち合い、死臭が立ち込めた渋谷のスクランブル交差点は惨劇の地へと化していた。
「戦場が始まらない保証はありませぬから。あの子の末裔が始めた、二度目の世界大戦も同じく」
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