第39話 所以


 終わった、と所以の、この国に有望な未来が果てしなく、続いているようにも思えないのに、安寧を祈願した神楽舞を捧げる少年である僕は、皇居外苑の森に向かって、胡蝶の夢のように舞っているのだ。


 


 小高い森の中で眠る水鳥たちは、薄色の東雲になったら東京の空を飛翔し、その地球の彼方へ留飲を下げず、絶望から立ち去るのだろうか。


 


 彼女のニヤニヤした苦笑いを常に飲み干すように、僕は言いなりの棒杭人間だった。


 それも、甘寧に突きのない、彼女の気分に常日頃、左右される弥次郎兵衛であるのだ。


 彼女が上機嫌ならば、多数派である右側へ、彼女が不機嫌ならば、少数派である左側へ、要するに意思決定のない、愚昧な少年。


 


 神楽習い一辺倒に励んだせいか、憔悴し切ってしまい、僕は公園の影を纏ったベンチで座り込んだ。


 もう、夜も深い。


 そろそろ、アパートに戻らないといけない。


 ベンチから立ち上げると、あの青年が置き忘れた紙切れを発見した。


 


 開けてはいけなかったものの、封筒も納付されておらず、書類は丸見えだった。


 その内容に疲弊が体躯の内奥を蝕んだ僕は絶句した。


 彼女が所属する名門私立大学に関する、秘密文書だった。


 


 大学の入学試験での不正に関するものだった。


 要するに裏口入学に関する内容だった。


 その記載された内容には、彼女の息のかかった受験生には特別の待遇を施し、ほぼ無試験で入学を許可する、というものだった。


 

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