第27話 藤浪悔恨
少女の気まぐれな不登校傾向に僕は何某かのシンパシーも沸かなかった。
結局は利己的なのだ。
僕が経済的な困窮で高校進学を諦めた、と話したばかりなのに、こうやって、自分自身の苦痛を無防備に喋るしか、能がない少女。
世の中は本当に不公平にできているものだ。僕がどんなに血反吐を吐くような努力に邁進しても、少女は濡れ手で粟の状態で、棚から牡丹餅の高級店で買った餅を何個でも努力の甲斐もなく、食べられるのだ。
せっかくの麗しい藤波も爽やかな木工薔薇の繁茂も、少女の出番で台無しになった気がした。
向こうは僕に気を向けているかもしれないけれど、僕は全く関心もない。
ご令嬢がぬくぬくとご満悦にサボタージュを謳歌しているだけの話。
「学校には行ったほうがいいよ。せめて、高校までは日中通えたらいい」
「あたし、高校生だもん」
呆気に取られた僕は彼女の幼さが殊更、演技でやってのけぬ代物ではない、と確信した。
この言葉づかいで高校生なんて本来ならば、僕と同い年か、せいぜい一つ上か下か、その二択だ。
あまりにものの少女の幼心に僕は唖然となり、同時に親ガチャとは言い得て妙で、身分制が崩壊して久しい、とは建前で、しっかりとこの現代社会では、確立されているのだ、と堪え切れない憤りに襲われながらも、何とか、平常心を着地させようとする。
「高校生か。僕も全日制で通いたかったな。通信制高校じゃ、とてもじゃないけれど、学園生活とは程遠いから」
いつの間にか話の糸口を間延びさせている僕に気付いた。
「ふーん。あたしは学校に行かずに済むなら行きたくない。大学には行きたいけど」
勝手気ままに少女は独壇場を展開する。
「僕も大学には進学してみたいな。本を読むのは好きだし」
少女の風来坊の台詞に道連れにするように僕は返答する。
「ママは通信制高校に通うような、最底辺の子は大学進学なんて端から無理だと書いていたよ。絶対に無理だよ」
母親譲りの、他人の進言を断定するような語調に僕は形振り構わず、骨身に応えた。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。そりゃあ、叶わない夢を語っても嗤われるだけだから僕も調子をこいていたな」
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