第14話 夕雲雀少年


 元より、僕は幼い頃から、中年の高校教師だったあいつから散々、変に慰められていた経験則があったから、この情動だって、我慢は容易かったはずだった。


 憂き瀬に溺れる中、懐かしい、惚気るような、邪恋の痛みが僕を貶し、彼女は耳元で何度か、愚痴をあけすけと言い放った。


 


 ――私はこの正当な社会をぶっ壊す、男たちを虫唾が走るほど、大嫌いなのよ、生まれながらの男である、あなたは余程、幸せいっぱいで生きてきたのね、と房事を実行しながら、卑屈になって嘲弄した。


 


 せめて、春怨のような濡れ事に一心不乱に、専念しているときだけは、そんな人間として、否定性するような、叱責を言っては欲しくなかったのに。


 


 春霞に瞳の奥に愛の廃墟を一瞥しながら、地下深くに春雷とともに僕は落下する。


 


 浮かれ猫のような、彼女の豊満な胸元で、干し葡萄のような乳首を転がしながら、一夜を明かしたとき、僕は勿忘草色の黎明、この世界の残酷さに素手で触れ、もう、僕自身が二度と純粋な子供へとは、戻れない真実の詩を下手糞ながら、静かにその事後の小部屋で夕雲雀のように謳った。


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