第42話 その続きを

「おっはよー」


 うちがりこぴんに聞いたところでぞろぞろとクラスメイトが入ってきた。


 で、話はここまで。


 ただ、りこぴんは、


「考えとく」


 とだけ返事をくれた。


 それを聞いて席に戻っているとユウもやってきた。


「おはよ。もう話はついたのか?」

「ん。なんかな、思ってたより二人とも鈍感なだけみたいや」

「なんだそれ。俺たちみたいだな」

「あはは、せやな。でな、夏休みなんやけど、あっくん交えて遊ばんかって」

「篠宮さんはいいって?」

「考えとるみたい。あっくんにはいうてみてや」

「わかった。でも、なんで連休の時会わなかったんだろな」

「ほんまな。あっくんがビビって連絡できんかったんちゃう?」

「あー、そうかもな。あいつ、恋愛になると全然だめだからな」


 ちゅうわけで明後日からの夏休みに、りこぴんも地元へ。

 って、まだ来るかどうか知らんけど、その前提で話を進める。


 二人はずっと両思い。

 せやけど一回こじれて素直になれてないだけ。


 きっとうまくいく。


 そう確信して、夏休みが来るまでにユウと準備を整える。


「ほな、まずどこ行くか考えなな」

「海とかでいいんじゃないか?」

「う、海っちゅうたら水着なるんか?」

「いや、別に泳がないなら水着じゃなくてもいいけど」

「み、水着見たくないんか?」

「な、なんだよ京香が嫌そうだったからそう言っただけだろ」

「……見たい?」

「……見たい、けど」

「けど?」

「見たいよ。京香の水着姿なら。でも」

「で、でも?」

「……他の人に見せたくない」


 ユウがぽつりと。

 それを聞いて朝から照れる。


「……あほ。うちも他の人に見られたくないわ」

「じゃ、じゃあやっぱり水着はなしで」

「……せやな。でも海はええかもな。開放的な気分なるし」

「で、そのあと飯食って……そういや花火大会あるだろ。祭りなんか楽しくてよさそうじゃん」

「あ、ほんまやな。そういや二人で行ったんいつが最後やろ?」

「小学校の時かな。話してたら行きたくなってきた」

「うちも。なんか楽しみやなあ夏休み」


 もう、気分はすっかり休みモード。

 それはうちらだけやない。


 受験もまだで、部活動やって最後の年でもないうちらにとっては夏休みこそ一大イベント。

 何をするでもないけど、とにかく思い出を作りたい。


 そんな気持ちで前のめりになるうちらはもう、授業どころでもなく。


 先生も、二学期に向けての話ばかり。


 そんなこんなな数日をのんびり過ごして。


 夏休みになった。



「休みやー!」


 夏休み初日の朝。


 うちはグーンと間延びしながらユウの隣で目が覚める。


「京香、まだ朝早いって」

「えー。なんか起きんでええって思うと逆に早起きなってまうねん。わかるやろ?」

「まあ、気持ちはわかるけど。で、なにするんだ?」

「んー、なんしよっかなあ」


 結局、夏休みに入るまでの間にりこぴんからの返事はなかった。


 で、あっくんも。


 とりあえず帰ってきたら連絡をくれとだけ。

 うちらがりこぴんのことでなんかしようとしとるんは察しとる感じやったからあんましつこくは聞けず。


「とりあえずこっちにいても暇だし実家帰る?」

「えー、でもこっちでデートとかもしたいやん」

「まあ、夏休みは長いからさ。先に彰のことを解決しておかないとすっきりしないし」

「うーん、せやな。でもとりあえず……ん」

「……うん」


 朝のキス。

 ここ最近は毎日これを、うちからねだってる。


 ユウはこういうのが苦手なみたいで、いつも照れながら恐る恐るキスしてくれるんやけど、うちはそんままユウにぎゅっと抱き着いて離さへん。


 で、しばらく。


 キスを楽しんでおしまい。


 この先はまだ、なんもない。

 ユウは興味ないんかなって思ってたけど。


 でも、考えてないわけでもなかった。


「……京香、彰の件が終わったら、ええと、続き、したい」


 って言われた。

 その瞬間、あれこれ想像してうちも心臓がバクバク。


「……すけべ」

「ご、ごめん」

「嘘……ええよ、でもなんであっくんのこと終わったら、なん?」


 正直うちかて死ぬほど恥ずかしいけど、それでもはよユウに求められた気持ちもあった。


 だからなんで我慢できんねやって悔しい気持ちもあったけど。


「……多分、そうなったら俺、幸せすぎて彰のこととかどうでもよくなりそう、でさ」

「な、なんやそれ。薄情やなあ」

「俺はいつだっていいやつじゃないよ。結局自分のことで精いっぱいだし。多分京香とのことで俺、頭いっぱいになる。でも、今は親友の為に頑張りたいから。それに、ずっと一緒だから焦らなくてもいいかなって」

「ユウ……せやな。みんなで幸せになりたいなあ」


 ちゃんと考えてくれてることをきいて、お預けくらった気持ちもなんとなく落ち着く。


 そんまま、二人でベッドから降りて。


 とりあえず朝飯でもって思っていたところで。


 りこぴんから連絡が来た。


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