第33話 久しぶりの再会
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「俺、なんかしたっけ?」
目を丸くする京香に思わず聞いてしまう。
ただ、京香ももちろん「さあ」とだけ。
しばらく連絡してなかったから、怒ってるのだろうか?
「とにかく、この後会えるらしいから」
「で、どこいくん?」
「いつも行ってた喫茶店あるだろ。あそこで一時間後だって」
「ああ、なついなあ。ほな化粧するわ」
「別にいいだろ、彰だし」
「あかん、地元なんか誰に見られるかわからんし。それに……ユウの彼女、なんやから綺麗にしとかんと、な?」
「う、うん」
京香はそう言って、すぐにポーチを取り出して化粧を始める。
心なしかいつもより気合を入れてメイクする姿に、俺は少し頬を緩ませながら。
準備を整えてすぐに家を出る。
◇
「あ、いた。おーい」
通っていた地元の中学校の傍にあるボロボロの喫茶店の前。
そこにスラっと背の高い好青年の姿が見える。
「お、二人とも久しぶりだな」
で、さわやかな声が返ってくる。
彰だ。
中学の時より少し髪をさっぱりさせているが、以前にも増してイケメンな親友の表情は、心配していたより明るい。
「おお、あっくん久しいなあ」
「京香ちゃんも久しぶり。ていうか……二人、くっついた?」
「え、わ、わかるん? 実は、せやねーん」
「あはは、手繋いでてなんもないわけないよな。そっかそっか、ようやくかよ。ばっちりやることやってるんだな」
「や、やってへんわ! あっくんそういう下ネタに走る癖あかんで」
「はいはい。じゃあ店、入ろう」
「ああ」
ラインの文面を見て不安もあったが、何も変わらず彰は彰のままだった。
その様子にほっとしながら店内へ。
少し懐かしい、たばこの匂いのする店内へ入るといつも座っていた奥の窓際の席へ。
「久しぶりだなあ、ほんと」
「大袈裟だよ優、卒業式以来だろ」
「でも、色々あったじゃんかここで。ほら、彰が彼女と別れた時だってさ」
「あーもう、そういう話はやめろよな」
懐かしい話に花が咲く。
京香も隣で俺たちの話を聞きながら「なついなあ」ってつぶやいて。
ほんと、久々の再会を楽しんでいる様子。
ただ、やっぱり彰はどこか浮かない表情を時々見せる。
「……ふう」
「なんだよ彰。ていうかさっきのラインはなんだ? 話、あるんだろ」
「あ、ああ。まあ、あんな言い方してさっきは悪かった。てっきり、お前がりこと付き合ったのかって思ってたからちょっと、な」
「りこ……? え、篠宮さんのことか?」
「なんだ、やっぱり知ってるのか」
「いや、なんでお前こそあの子を知ってるんだよ」
篠宮りこ。
最近まで京香に絡んで、俺のことを好きだと言って困らせていたクラスメイトの女の子。
で、この前京香と和解してからは普通に話すようになったけど、別にそれ以上ってほどの仲でもない。
「いや、俺とりこは昔なじみでさ。小学校、一緒だったんだ」
「へー、そんな繋がりがあるなんてびっくりだな。でも、それと俺が何の関係あるんだよ」
「ずっと連絡はしてたんだけど、あいつ高校でも男困らせてばっかだろ? で、最近は黒木ってやつといい感じだとか言っててさ。まさかお前じゃないかなって思ったりしながらずっと、もやもやしてたんだ」
「いや、あれはどっちかといえば京香に対する嫌がらせみたいなもんだよ。あの子は俺のこと、なんとも思ってない」
「そ、っか。ま、あいつが誰かを好きになったりなんか、しないよな」
遠い目をしながら、まるでたばこでも吸ってるかのように大きく息を上に吐く。
その様子を見て、俺はどうしたらいいのかわからず。
彰の言葉を待っていたのだが、先に話し出したのは京香だった。
「あっくん、もしかしてりこぴんとなんかあったん?」
「京香ちゃんはさすがだな。ま、なんかあったというか、なんもなかったからというか」
「なんやむずがゆい言い方すんなあ。ふったんか、ふられたんか?」
「おい京香」
「いいって優。京香ちゃんの言う通りはっきりしないんだよ俺。だからりこはああなったし、なんか結果的にお前らにも迷惑かけたみたいだな」
優しく笑いながらも少しひきつった笑み。
彰のそんな表情はやっぱり初めてで、俺はなんと声を掛けたらいいかもわからない。
ただ、そんな時いつも空気を壊してくれるのは京香だ。
「あっくんのドアホ。はっきりせえへんくて相手悲しませたんならはっきりしたらええねん」
「いや、まあわかってるんだけど、さ」
「わかってへん! 今更とか、俺なんか、とかマジでふんづまったみたいな男子、いっちゃんキモイで。あっくんはそんなやつちゃうやろ」
「京香ちゃん……」
珍しく口ごもる彰を京香が叱ると、彰の目に力がこもる。
そして、
「……うん、そうだな。俺、ちゃんとしなきゃだ。優を見習って、な」
そう言ってから、水に口をつけて。
彰は俺たちを見て、こう続けた。
「俺、りこに最低なことしたんだよ」
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