隅っこガールの頭はパンク寸前

 頑張って残り少ない時間でどれだけの人と関われるか話せるか分からないけどやってみることにした。


 私は来年は県外の大学に行くからもうクラスメイトと気軽に会うことはない。

 今が私のこのダメところを治す大チャンスなのだ。


「お、おはようございますっ」

「おはよう田辺さん」


 とりあえず星野さんと永瀬くんへの朝の挨拶は欠かさず行った。

 そこから彼らと仲のいい男女問わず挨拶を少しずつだがしていった。


 初めは皆戸惑っていたが、毎日していると笑顔で返してくれて胸が暖かくなった。

 それに前よりも声をかけられるようになった気がする。

 挨拶ってすごいと思った。


「司書子ちゃんおはよー!」


 星野さんは勢いよく突進してきた。

「ぐえっ」って変な声が出てそのまま倒れそうになる。

 ぶつかる絶対痛いよこれと痛みに備えるために目をつぶる。


「っと、大丈夫田辺さん?…明重いからどいてくれ」

「…あ、生きてる?」


 どうやら私を田辺くんが受け止めてくれたらしい…は?受け止めて…?


「ぎゃあああ!」

「あ、ごめ」

「…して」

「え?」

「コロシテ…クダサイ」

「なんで?!」


 こんなことならダイエットすれば良かった。

 絶対重たいって思われてるこいつデブって思われている。

 最悪最悪!もう終わった私の恋…いやそもそも初めから終わっている恋なのだから別になんら問題はないんだけどね。


「すみません本当に重たかったですよね?!」

「大丈夫だよ軽かったから」


 あーこれが俗に言うお世辞、優しさだ。

 言われると辛いそんなお世辞やめてくれいっそ一思いに私の心へし折ってでもいいから、ハッキリ言って欲しい。


「私…気分悪いので保健室行ってきます」


 顔見れないし見せられない。

 怖くて怖くて仕方がない。


「司書子ちゃん大丈夫?!付き添いする」

「お願いしま…ひょわいや!」


 浮いた感覚で私はがばりと顔を上げると、目の前には永瀬くんの顔があった。

 いわゆるお姫様抱っこ。

 こんな恥ずかしい担ぎ方じゃなくて俵かつぎしてくれた方がマシだ。


「俺連れていくから明は課題やってろって」

「そういえば課題やってなかった…ごめん司書子ちゃん!頼んだ遊馬!」


 親指を立てて明ちゃんは笑った。


 ちょっと星野さん?!と思って後ろを見ると口パクで「頑張って」と言っているように見えた。

 まさか…私が永瀬くんのこと好きだって知って…?!



「失礼します…あれ?先生いないや」


 まぁいいかと言って私をベッドに下ろす。


「とりあえず熱測っておく?」

「大丈夫です熱はないと思います…原因は私にありますから」


 毛布を被って私はそっぽを向いた。


「え、っと俺何か怒らせたかな?」

「違います、ただ」

「ただ?」

「…お世辞言わせたりさせる自分が嫌で嫌で仕方がないだけです」

「なんのことだか全然分からないんだけど?」

「ごめんなさい…」

「何も悪いことしてないでしょ」


 私は顔を毛布で顔を隠すように被る。

 きっと今すごく酷い顔をしていると思う。


「顔見せてよ」

「断ります絶対に見せたくないです」

「はーい取りまーす」

「ちょ、ちょっと!」


 女子の私が男子の力に勝てる訳もなく強制的に私の毛布を取り上げられた。


「俺はさ田辺さんのこと重たいだなんて思ってないよむしろちゃんとご飯食べてるか心配になったよ」


 ご飯は食べている。

 ちなみに今日の朝ごはんはご飯と味噌汁、魚を食べてきたから大丈夫なはずだ。


「永瀬くんは優しいですね」


 こんな隅っこにいる私にも優しくしてくれて本当のイケメンはこういう人をいうのだろう。


「優しい…ねぇ?そんなことないかも俺はずるいヤツだよ」

「それはどういう…?」

「気づいてないなら教えない、秘密」


 優しく笑って永瀬くんは私に毛布を被せてくれた。

 私はいつの間にか好きな人に重いって思われたから好きな人が考えているか分からないになった。












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