51 今後のこと
ひと段落して、皆でディナーをと王太子から誘いがあった。
すでに他のメンバー——妖精王とフェリル、そして黒騎士やその他この件に尽力した近しい者——が集まっていた。
「久しいな」
王太子がテオの顔を見るなり、そう告げる。
先ほどすでに顔を合わせているわけだが、挨拶をする余裕もなかったので、不思議なタイミングではあるがお互いにそれについては触れない。
「えぇ、ご無沙汰しております」
王太子とテオは顔見知りだった。
父から見放されていたとはいえ、城仕え宰相の息子ということと、侯爵家の人間ということで顔を合わせる機会は多少あったのだ。
黒騎士と目が合うと、彼は深々とお辞儀をした。
宰相の息子だったことを知ったのだろう。位はテオの方が上なため、態度を改めているといったところか。
「いいよ、別に。そんなかしこまらなくても。もうとっくに家を追い出されている身。デラクール伯爵様に頭を下げてもらう所以もない」
それは少し嫌味っぽく、しかしそれでいて戯けているような口調だった。
食事の後、宰相の今後について聞かされた。
宰相に全ての権限を与えていたと言っても過言ではない国王陛下も同罪として、自ら王位を放棄したとの報告も受ける。
時期国王の継承権は、順当にいけば王太子のもの。国の危機に一番尽力したのも王太子であり、それに関して文句を言う者はいなかった。
「自分が王となるのなら、側近としてアルに護衛を任せたい」
黒騎士は一瞬、目を見開き驚いたような表情を浮かべていた。真意を測るかのように、王太子を見つめる。
王太子は冗談を言っているような雰囲気はなかった。それは口調からも表情からも読み取れた。
黒騎士はすぐに目を伏せ、諦めたように笑った。
「王命であれば逆らうことなどできません」
「まだ王ではないけどね」
王太子は眉を下げた。次いで、テオの方へと視線を移す。
「テオルーク・アーバスノット殿には、宰相に就いてもらいたい」
「え……しかし、私は……」
「残念ながら君に拒否権はない。国を変えることに尽力することがラナ・セルラノの——ひいては君のためにもなるんだからね」
「であれば、ラナも……」
テオは横目でラナを見る。その視線に気づいた王太子も、全て承知しているかのように小さく頷いた。
「もちろん彼女もこのままここに……」
「それはお断りする」
言葉を遮ったのは妖精王だ。
この場に似つかわしくない横柄な態度で、王太子の言葉を遮断する。
「この国が再建するまで、ラナ・セルラノは森で預かる。王城に置かせるつもりはない」
「何を……」
「国を救うために力を貸したのだ。褒美をもらってもバチは当たるまい」
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