第32話 乙女の事情と小さな油断~美桜~
「ヒマ~」
ソファーの上にだらしなく横になっている私は、今バリバリ仕事してご飯食べる時間すらないくらい忙しいっ!て人達から石を投げられそうなくらい、のんべんだらりと自堕落な生活をしている。
「いや、好きで自堕落してる訳じゃないけど…」
と言い訳を溢しながら、ソファーの上でクッションを抱えてゴロゴロ転がる。
「早く、犯人捕まらないかなぁ~」
話し相手がいないとつい独り言が増えてしまう。
専務はストーカーを捕まえるまでって言ってたけど、それが具体的にいつなのかはわからない。
「普段、忙しい分のんびりしてろよ」と専務は言ってたけど、ちゃんと仕事をして獲得した休みならもちろん大歓迎だ。でも、こんな風に自由に外出も出来ない休みは逆にストレス。
外出できないなら、いっその事積んでるゲームを消化しようといざやり始めたのはいいものの、何故か集中力が続かない。
やっぱりさ~、こう言うゲーム時間って仕事で忙しい中、どうにか捻出しようと時間をやりくりしてプレイするのがいいんだよね~
集中し過ぎて徹夜になる事もあった。もちろん、休日の前にしかやらないけど。
えーい、いっそ普段出来ないとこの掃除でもやりますか。
えいやっ!と体を起こした瞬間、足の間から液体が溢れ落ちる感触がして、私はギョッとする。
覚えがあり過ぎる感触に、私は急いでトイレに駆け込む。
予想通り、下着には血が…
あぅ~、始まっちまったぜ。
私はトイレの収納ドアを開ける。そこにはこんな時の為の物が…なかった。
「マジか」
そう言えば、先月使い切った。買っとかないとって思って、すっかり忘れてた。
トイレから出た私は自室に入り、通勤鞄の中を探る。
ポーチの中に一つくらいは残っている筈…
探り当てたポーチの中には思った通り、生理用品が一つ残っていた。それを使って急いで処置すると、ようやく落ち着く。
だけど、これだけじゃ専務が帰って来るまで到底もたない。そもそも、専務に『帰りに生理用品買って来て欲しい』とはお願い出来ない。羞恥心で死ねるレベル。
昼用夜用の生理用品に加えて、痛み止めも欲しいし、ハーブティーも欲しい。一番近いドラッグストアは歩いて十分もない場所。
「…パッと行って、サッと買って、パパッと帰って来れば大丈夫だよね」
外出したって、バレなければいいのだ。なんせ緊急事態なんだから。昼間だし、一応眼鏡をして変装すればオールオッケーな筈。
そう言い訳して、私は徒歩十分程のドラッグストアに行く事にした。
※ ※
首尾よく、目的の物を購入出来た私はご満悦だった。
ルンルン気分で私は帰り道を歩く。
ほら、やっぱり何もない。専務は心配性過ぎる。
家からドラッグストアまでの道程を私なりに警戒しながら歩いたが、結局何事もなく、辿り着いた。今度は来た道を逆に辿ればいいだけ。
楽勝、楽勝。
数日ぶりの外出に鼻歌さえ出てくるくらい、ご機嫌で私は歩く。
横断歩道に差しかかると、信号が赤に変わった。
私は立ち止まって、信号が変わるのを待っていると、突然背中を強く押された。
何も身構えていなかったから、私は簡単に突き飛ばされて、よろけながら車道に飛び出してしまった。
危ないっ!と思った時には横から車がクラクションを鳴らして、近付いていた。
強い衝撃を体に感じた。
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