第4話 ある夫婦の運命

 真昼の田舎でサイレン音が鳴り響く。普段は穏やかな時が流れているので、この光景に異様だと感じる住民は少なくなく。外に顔を出ていた。そんなところに、楠谷と鴻ノ池が車に乗って事件現場へ向かっていった。

 

 二人が向かっている現場で起こった事件とは、夫婦喧嘩が発展しすぎた結果、旦那が殺されるという事件だった。通報者や先に到着した警察官によれば、妻の雪菜が一ヶ月に及ぶ旦那の浮気でとうとう激昂し、そのまま旦那と言い争いになり、更にエスカレートした結果、旦那が刺殺された事件だった。現在妻の雪菜は行方不明のことであった。

 

 「お疲れ様です」

 二人は規制線をくぐって現場に入る。

 「状況は?」

 楠谷が近くの捜査員に訊ねる。

 「現場は荒れており、状況から見て短絡的な殺人だと思われます」

 「そうか」

 二人は礼を述べ、現場を調べていく。

 一般的な家の内装で、あまり特色は感じられなかった。所々指紋がついているらしく、ナンバーが振られていた。

 二人は台所に行くと、下の戸棚が開いてあった。

 「ここから凶器の包丁を取り出したわけか・・・・・・」

 次に二人は二階に上がる。そこにも、捜査員が複数いた。小部屋が二つほどあったが、どれも事件と関連が無いように思えた。

 現場を一旦出て、二人は車に戻る。

 「本庁に戻るぞ」

 楠谷がそう言い、鴻ノ池がエンジンをかけ始める。すると、後部座席から「あの・・・・・・」という女性の声が聞こえた。

 楠谷が「どちら様でしょうか?」と言うと、俯いたまま女性は「・・・・・・私が旦那を殺しました」と自白した。

 

 本庁に戻り、二人は妻の雪菜を連れて取調室に入っていた。

 「どうして、旦那さんを殺したりしたのですか?」

 「・・・・・・夫の浮気が許せなかっただけです」

 雪菜は俯いたまま答える。

 「お辛い気持ちは分かりますが、その夫の浮気というのはいつまで続いていたのですか?」

 「一ヶ月前です。今日で、夫の浮気が一ヶ月過ぎようとしていました」

 雪菜は鼻を啜る。充血した目を前に向けて話し出す。

 「最初は私が怒っただけでした。多分一週間は続かないだろうと思っていましたけど、女性の名刺が出てくる度、旦那はまだ浮気をしているんだなって。それが昨日の夜、私はとうとう我慢が出来なくなって、旦那を直接怒鳴りました。そうしたら、旦那は逆ギレしたんです。そこから口論に発展して、最終的に離婚話を持ち込まれて、つい感情的になって台所の包丁で刺してしまいました・・・・・・」

 雪菜は手で顔を覆う。そこから泣き声が漏れる。

 「・・・・・・凶器の包丁はどこに隠しましたか?」

 楠谷が優しく語りかけると、雪菜は充血した目で楠谷を見る。

 「お風呂場です」

 「分かりました」

 楠谷は鴻ノ池に指示して、捜査員に凶器を確認してくるよう伝える。

 「・・・・・・雪菜さん」

 「・・・・・・はい」

 雪菜は小さい声で反応を示す。

 「罪を償って、赦されるように生きろ」

 低い声で楠谷は言い、その場を後にした。

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