第34話 本編スタート 勇者ゼクトのやり直し 後悔

ガルバン帝国に来た。


お金は有るし、その気になれば士官は簡単だ。


騎士には簡単になれる、そして俺なら出世して騎士団長位にはなれる。


俺には名乗る資格はないが『勇者』のジョブはあるんだ。


この位の出世は今でも簡単だ。


だが、それで良いのか?


幼馴染で親友のセレスは英雄だ。


そして、俺は彼奴に全てを押し付けて逃げた。


俺は彼奴に既に沢山の借りがある。


これからの人生で、それを返していかなくてはならない。


『セレス、お前はすげー奴だよ』


心から今は思っているんだ…だが、俺の中にそれ受け入れる心と『負けたくない』そういう心があるんだ。


親友だからこそ、負けたくない。


だが…俺は本当に何をしているんだろう。


冷静になり、時間を置けば置くほど『自分の愚かさ』が良く解る。



一緒に居た幼馴染を捨てるように飛び出した。


馬鹿だな!


確かに彼奴らは『俺よりセレスの方が好きだ』それは解る。


だが、今のセレスがそれを簡単に受け入れられるだろうか?


答えは『ノー』だ。


俺の母親と結婚している以上、幾ら法的に問題が無いとはいえ、セレスがあの三人を受け入れ妻にする事はないだろう。


それなのに…俺は、そんな三人を置いて出て行った。


今なら母さんが怒った意味が少しは解る。


俺は…彼奴ら三人を見捨てたんだ。


だから、母さんに怒られた。


俺の父さんセクトール並みのクズだ。


心が離れたから、敵を怖がり戦わないからと、あいつ等をどこかで嫌いになり、足手纏いだと思っていたんだろうな。


『そんな足手纏いはもう要らない!これでも此処迄は俺なりに頑張ってきたんだ、ちゃんと面倒も見てきたんだ。もう許して欲しい』


面倒を見た…よく言えたもんだ。


良く考えずに戦い、負けた挙句、仲間の心を折られた。


ただ、無謀に戦い…仲間を壊しただけ。


それが俺の勇者としての全てだ。


全部俺のせいじゃないか!


『俺がセレスを追放しなかったら』マモンすら出し抜く様な切れ者が傍に居た。


セレスならもしかしたら、とんでもない方法で戦いを避けるなり、何かして、もしかしたら、三人の心は折れなかったかも知れない。。


そしてきっと…怪我や惨めな思いもさせないで済んだ。


きっと今も…5人でいられたかも知れない。


男勝りで生意気な剣聖 リダ


やたらと大人ぶっている聖女マリア


大人しく控えめな賢者メル


その心を壊したのは俺だ...


俺は…あそこに何をしにいったんだ…


俺はセレスを仲間にしてもう一度やり直す為にいった筈だ。


素直に謝り、それで無理なら…俺はどうするのが正しかったんだ?


今なら正解が解る…『三人を連れ出て行く』それが正解だ。


壊してしまった原因が俺にあるなら、俺が三人を時間を掛けて立ちなおらせる義務があった筈だ。


それなのに…俺は


『好きだと言ってくれた幼馴染を捨て』更にセレスに沢山の借りを作り、その全てから逃げ出した。


俺は本当に何をしているんだ!


勇者の名前から逃げて、幼馴染から逃げた挙句、その責任を全部セレスに負わせた。


母さんが怒る筈だ。


故郷だってそうだ!


同じように仕送りをしたり、支援する事は出来た筈だ。


だが『出来た』なんて後悔を今更しても仕方が無い。


『やらなかった』それが正解だ。


なんだ、俺は!


これが母さんが言っていた


『手放した者の大きさをいつか知る時がくるわ、その時貴方はきっと後悔する』


なんだろうな。


沢山の物を失った。


何が『世話になったなセレス…じゃぁな」だ。


そんな彼奴に


『ゼクト…いつかまた酒でも飲もうぜ…』


だとよ…


勝てないな、こんな俺にまだ居場所をくれるのか。


次にセレスに会う時はきっと、少しは真面な男になっていよう。


そうしないと


もうあわす顔が無い。


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