第9話 心の別れ マリアの場合
ゼクトから話を聞いて、本当にガッカリしたわ!
本当に愛想が尽きたわ!
大体、私に言いよってきたのはゼクトの方なのにあれはないわ!
私から告白したわけじゃ無くしつこい位に声を掛けてきたんじゃない!
しかも、私が付き合うのをOKしたら、まるで私を囲うようにして他の男の子から遠ざけていたのはゼクトよ!
確かに同年代は私達だけだけど、私は年上も年下もいけるから、セレスと貴方だけが男じゃ無いのよ、私にとってはね。
それに将来は村を出るつもりだったから、別に村の中で男を決める必要は無かったのよ!
散々『好きだ』『愛している』そう言ってきたのだから、勇者になっても、王女との婚姻や貴族との婚姻は『好きな人がおります』といって最初の時点で断りなさいよ!
それを期待していたのに普通に王女との婚約を受け入れるなんて、その時点で最低だわ。
実質、そんな事は普通は出来ないし。
長い付き合いで腐れ縁だから、仕方なく側室の件もOKした。
上に二人が居るだけじゃなく下にリダが居る…パーティだから仕方が無い、これも腹がたったけど仕方がないとOKしたわ。
それに仲間だから、引き入れたい!そう言うからメルの件も渋々OKしたわ。
だけどね?!女神の顔も3度までそういう言葉があるのよ。
今回は4回目、流石に私もキレるわ。
表には出さないけど、流石にキレるわ、いえキレているわ私。
今のこのパーティの状況を考えたら、言いたい事は解るのよ!
セレスが戻ってきてくれないと本当に困るもんね。
皆がそう思っている。
『だけどね、本当にそれで良いの?』
それをゼクト、私は貴方に言いたかったの。
私は最初は貴方がそんなに好きじゃ無かったわ。
だけどね、しつこくきて仕方なくだけど付き合い初めて、時間が経って、気がついたら好きになっていたのよ!
そんな時間を掛けて口説いた女を親友とはいえ簡単に渡して言い訳?
そんな簡単に手放せる存在なら…
『だったら最初から口説くな』そう言いたいわ。
大体、私の初恋は貴方じゃ無くてセレスなのよ!
当たり前よね、優しくて大人なんだから、普通にガキみたいな貴方よりあっち選ぶわ。
皆は子供だからセレスの魅力に気がついて無い子ばかりだったけど、私はませていたからか、その魅力が解ったわ。
頭も良いし、気が利くし、真面目。
ママの言う『理想の旦那さん』その者だもの。
しかもそれだけじゃ無いわ。
あの、子供嫌いのうちのお父さんですら『あの子は良いね』そういうのよ『ただ事じゃないわ』私ですら子供は煩いから嫌い!
知的ぶってて、他人を見下し馬鹿にして認めないパパですら認める存在、傍で見ていれば解かる。
子供じゃ無くて大人の目でみたら『理想の男性』その者だもん。
ママをはじめ多くの大人の女性が『あと5歳私が若くて未婚だったら』そう言っていたわ。
5歳じゃ足りない。
なんていってママに睨まれた記憶もあるけど。
『マダムキラー』そんな風にセレスをいう女性も居たわ。
だけどね…私は逃げたの。
セレスの横に並んだら、自分が霞んでしまう。
そう思ったから、セレスを諦めて、貴方を選んだのよ。
その私に、セレスの所に行く選択をさせる訳?
『もう、どうして良いのか解らないわ』
初恋のセレスを諦めてゼクトと付き合った、その私がセレスと付き合う訳?
今でも私は多分、セレスを好きだわ。
だけどね、この愛はもうゼクトに対する『好き』とは違うのよ。
セレスへの『好き』は昔と違って『パパやママ、家族への好き』に近いわ。
私のパパのシュートは、本ばかり読んでいて私には構ってくれなかった。
本を読んでいる時に話かけると凄い顔で怒る、そんな親だった。
不思議とセレスには読み書きを教えていたり、普通に話すけど…今思えばあれはセレスが大人な対応で店番を手伝ったり『尊敬している』そんなそぶりをしていたからだ。
話を戻すけど…私には名前ばかりで本当の所父親が居ない様な物だった。
相談も話も真面に出来ないんだから、あれは父親じゃないわ。
ゼクトは考え方が子供だから、相談しても意味が無い。
そうなると困った時に相談できるのはセレスしか居なかったのよ。
セレスと話すと、そうまるで年上の人と話している様な気がして、安心できるのよ。
だから、セレスは私にとって、お父さんみたいな者なのよ。
子供の時に泣いている私を慰めたり、お腹がすいた私に焼き芋をくれたりして本当に、同年代と思えないわ。
親が居ないセレスにとって芋だって貴重な筈だわ。
ママやパパに怒られると割って入って助けてくれた事もある。
森で迷子になったら、自分も子供の癖に助けに来てくれたりね。
だからね『セレスはお父さんなのよ!』私にとってそんな存在。
そんなセレスの恋人や妻に私がなる!
どうして良いか解らないしモヤモヤするわ。
今更だけどゼクト…貴方の側室になっても3番。
それならセレスの方が良いかも知れない。
セレスとの未来はきっと幸せだわ。
魔王討伐の後は、私が治療院でも開いてセレスがつかれた私の肩を叩いてくれたり、お茶を入れてくれる未来が見える物。
多分貴方の傍で3番でいるより遥かに素敵な世界だわ。
それでもゼクト、私はまだ、貴方との未来に未練はある。
だけど、貴方と過ごす未来は、きっと楽しい未来じゃない。
私としてはセレスを選ぶのは父親を恋人にしたみたいで、抵抗があるし、恥ずかしい。
でもきっと貴方との未来よりはマシ。
今なら本当にそう思えるわ。
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