第6話 心の別れ

「俺は本当は気が進まないし、こんな事本当はしたくはない、だがこれしかもう浮かびあがらないんだ!先に謝っておく…すまない」


もうこれしか俺には思いつかない。


今現在恋人で、将来は側室とはいえ、生涯を共に歩むはずだった相手にこれを言うのは…本当に心が痛い。


だが、本当にこれしか無い。


「ああっ解っている、我々の誰かがセレスの婚約者、いや場合によっては直ぐに妻になれ、そういう事だよな」



「正確にはリダか私のどちらかね!メルはセレスを傷つけたんだから、無理だわ」


「待ってよ!私はあの時間違いなく恋人だった。私が反省して心から謝って、セレスが許す。それが一番の筈よ!心からの愛を示せばきっとセレスは許してくれると思う」


「果たして、それで足りるだろうか?事の発端は、俺がお前達の魅力に負けて独り占めしたのが問題なんだ。だから、俺は彼奴が望むなら誰でも差し出すつもりだ。最悪、三人全部を望むなら、その時は全員でも差し出す覚悟がある。本当にすまないな。ごめん」


「あはははっ、良いんだよ、仕方が無い、セレスが居ないと、私達は無力だ、特に私は、凄く役立たずになる。セレスの剣の手入れがないと戦力にすらならない。仕方がない…仕方が無いさ…少し考えさせてくれ」


リダは涙ぐんでいるが仕方がないし、どうしようも無い。


仕方がないんだ…


「ふぅ、仕方がないわね、私は子供頃から、貴方と結婚すると思っていたわ、まぁ貴方が勇者になったから側室になるしかない、そう思っていたけど…現状を考えたらかなり無理があるわね…でも、セレスは2番に好きな相手ではあるのよ。婚姻相手が1番から2番になる。仕方ないから考えるわ」


「悪いな」


「ゴメンね…元を考えれば、私が悪いの…だからゼクトは謝らないで…あの時私が馬鹿をしなければ…きっと、ごめん」


「本当に済まない」


俺はこの日、幼馴染をセレスに差し出す覚悟を決めた。


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