シェフとドンキ

……

中から煤で少し黒くなった多田野がいた。

「ケホッケホッ!今日はなんなんだよ⁈いきなりトラックに轢かれたり、転生したり、知らない人から変な液体飲まされたり、んで今度は爆発かよ!」

『⁈アラ、アノ爆発ナラ生物ハ何デモ吹ッ飛ブハズナノニ…』

「その様子だと…多田野…元気だな?」

「あぁ、風呂上がりみたいに熱いけどな」

『…マァイイワ。被曝シテイルハズヨ。確認サセテモラウワ……⁈ハ?アリエナイ…確カニ被曝シテルガ無効化サレテルワ!』

『何⁈あの至近距離でくらって無力化だと⁈じゃぁ、俺の、俺のタリウムは…』

『…ナイワ。無毒化サレテ消エ去ッテル。』

『まぁ、だいたい察してたっぺ。だってこの世界それで死なないところで大体察してたっぺ』

「「何⁈」」

『ソレデモ今生キテル生物ニハ耐エレルクライニナルヨウ私ガ調節シテルノヨ』

「なるほど…」

「じゃぁさっきのは歓迎の爆発だったのか!」

『イヤ、最大出力ノアナタダケニ目標定メテ飛バシタノヨ。』

「マジで殺す気だったのか…」

『当たり前じゃない。ニンゲンどもを生かしておいたら何をするか分かったもんじゃない。』

『でも、戦争しそうなニンゲンには見えないっぺ』

『将来なるかもしれないだろう』

「…俺はなんとも言えんがコイツの顔見て戦争しそうな顔に見えるか?」

『見えない』

『見えないな』

『見エナイワネ』

『見えるわけないっぺ』

「お前らひどい」

「な?俺たちも元の世界に戻りたいだけだ。戦争しにきたわけではない。分かってくれ…」

顔を見合わせた毒たちはしばらく相談した上

『いいわ、あんたらの世界に戻る方法を探すの、手伝ってあげる。あんたらもいいよね?』

全員がうなずいた。

『じゃぁ早速ごちそうするっぺ』

『アラ、私ハ遠慮シトクワネ』

そう言ってポロニウムは抜けた。

『そうだっぺか…でも、君たちは連れて行くっぺ』

僕たちはラボを抜けてカドミウムに連れられて先ほどの1番最初に見た家に着いた。

「あ、ここお前の家だったのか」

『んー正確には死んだニンゲンの家だっぺ』

「おぅ…」

困惑しながら家に入るとさっそくカドミウムが冷蔵庫を確認した。

『あ!そうだった、おいらご飯作れないんだっぺ』

全員がずっこけた

「何で言い出したんだよ!」

「早く飯食べたーい」

『こいつは本当に…馬鹿なのか…』

『どうすんのよ』

『Lascialo a me(任せなさい)』

また背後から話しかけられた。

『マイトシェフじゃないか。どうしたんだ?』

『今、ここをたまたま通りかかったデース!そしたら、あなたがたの声が聞こえたデース!だから、ワタシがオイシイ料理!あなたがたに作りマース!』

目の前のカタコトな日本語を喋る男はまさにシェフのような見た目をしていた。長いコック帽に長い料理長のようなエプロン。そして何より目を引いたのは…

「その胸ポケットの…白いものは?」

『Oh!これに気づくとはさすがニンゲンデース!これは、師匠に教えてもらったときに作った魚料理で余った魚の骨デース!肌身離さず持ってマース!』

そう言いながら彼の胸ポケットから出された物体はまるでアジの全身の骨のようだった。目を凝らしてみると小骨が何本か折れていた。

『ニンゲンっていうか誰でも気づくわよ…』

『だってお前のエプロン黒色だから黒の中に白い骨があったら誰でも気づくだろ』

『OhMyGosh!なるほどー!さすがはタリウムさんデース!次から灰色のエプロンにしマース!』

「そういう問題じゃないだろ…」

「それで飯はまだか!さっさと食べたいぞ!」

『all right、all right、さっそく作ってあげマース!食材を見せてくださーい!』

『あまり人に見られるのはいい気がしないっぺがどうぞ』

カドミウムが冷蔵庫の中身をシェフに見せた。

『ずいぶんと買いだめしてマースね。これじゃぁ消費期限とかわからないデース!』

『だって人を家に呼ぶことはほぼないからだっぺ』

『OhNo!なんて不健康なんでしょう!肉!油!添加物!これじゃまともに作れマセーん!魚とか野菜がないデース!あなたの畑はどうなってるんデスか!OhMyGosh!』

「ところで彼は誰だ?」

俺は隣のタリウム小声で尋ねた。

『彼はマイトトキシン。アメリカ料理専門店を開いている魚料理が得意なシェフだ』

(マイトトキシン:マイナーだがとても危険な即効毒。主に魚の体内に蓄積されその毒性の危険度はフグの持ってる毒のおよそ200倍!海の毒の中で1番危険。分子のサイズもほぼ最大級と言っても過言ではない。症状としては少量で食中毒となり、体内のカルシウム濃度を下げ筋肉の異常な収縮を促す。用途はなんと無し!そのくらい危ないのだ!)

「え?めっちゃ危なくないか?」

『安心するといい彼はみんなの食べる笑顔を見たいだけだから毒を守るなんてことはない』

『チョット!そこのタリウムさん!雑談するくらい暇なら魚と野菜を買ってきてくだサーイ!』

「買う?お店でもあるのか?」

『当たり前じゃない。お店がなかったらどうやって生活しろっていうのよ』

「それは昔の人みたいに自分で畑耕して狩りをする?」

『そんなレベルだったら俺たちは毛皮の服着てるぞ…』

呆れたように2人から突っ込まれた。

「意外だな!毒ならそういうのいらないと思ってたぜ!」

『とにかく!誰でもいいから食材を買ってきてくだサーイ!』

マイトトキシンがブチ切れた。

「『わ!わ!わわかったから!買ってくるから!』」

あれ?2人?見回すと俺とタリウムとマイトトキシン以外はこちらを見ない。

『話が早くて助かりマース!あなたもニンゲンなのに自分から申し出てくれて助かりマシた!』

半ば強制的に買い物に行かされた。

「なぁ、タリウム。コンビニとかスーパーとか見当たらんが本当にあるのか?」

『当たり前だ。あと大体3km歩けば着くはずだ』

「3km⁈やっぱやーめ『やめたらこの場で毒飲ますぞ』

そうこうしているうちにスーパーについた。

店の外見が全体的に黄色く目をひいたが何より店の名前が

【ブドーン黄ホーテ】

さらに店名の横にはぶどうの実のような黄色い帽子を被った黄色い生物のマスコットキャラクターがいた。これって…

「激安の殿堂のドン◯ホーテじゃねぇか!」

『ドンキ◯ーテではない。ブドーン黄ホーテだ』

「いや、アウトだよ」

『仕方ないではないか。この世界の建物の大半は昔の建物を再利用しているんだから、ここで喋っていたら拉致があかん。店内に入るぞ』

「そうだな…ツッコむのも面倒臭くなってきた…」

店の中に入ると

《♪ドン♪ドン♪ドンキー♪ド◯キホーテ!》

「だからアウトだよ!」

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毒創的な世界 デッドリーサン @deadlysun

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