米と鉱山と放射線

「多田野は平気か?」

『多田野というのはさっきのニンゲンだな?』

「あぁそうだ」

『大丈夫だ。問題ない。ただの便秘でトイレにこもってる。』

『それより、カドっちは!カドっちはどうしたのよ!』

「えぇとそのカドっちってもしかしてカドミウム?」

(カドミウム:水銀に次ぐ有名な即効毒。症状としては腎臓に障害が起こったり、骨が軟らかくなったりする。有名な公害としてはイタイイタイ病などがあり、鉱山から出てきたカドミウムが米などに付着し、それにより毒性を発揮する、しかしながら最近まで貴金属や指輪、さらには電ニッケルとカドミウムでできたニッカド電池というものまでできている。結構、身近だったのだ。)

『こっちだ!ついて来い!』

タリウムに連れられて行くと誰かがうつ伏せに倒れていた。

『おい!カドっち‼︎大丈夫か⁈』

目の前に倒れているカドっちことカドミウムの見た目は農家の子供のような見た目で背中にはツルハシとクワが掛けられていた。

『うーん?』

カドミウムが目を覚ました。

「なんだ寝てただけじゃねぇか」

『うーん?んー眠かっただけだったぺな?』

ふわぁあとあくびしながら彼は起き上がった。

『なんだ、気のせいじゃない』

『⁈⁈』

カドミウムは逃げようとしたがタリウムに捕まった。

『お前も、一緒だ。連帯責任。』

『オイラは巻き添えだっぺ!』

『同調したら一緒だ』

『どっちでもいいからさっさとくたばりやがれえええ!』

水銀は腰のハンマーで二人の頭を叩いた。

「⁈大丈夫なのか⁈」

『毒だから消毒されない限り死なないわ。けど、痛みはあるけどね』

『『グアアアアアアアアア』』

二人は頭を押さえて転がった。ちょうど多田野が帰ってきた。

「お?どうした?健二?人をやったのか?」

「いや、水銀が二人を襲って…」

『復讐よ』

『グゥ、一緒だろグワっ!』

言い返したタリウムがまた殴られた。

『うぅ…イタイ、イタイ…んあ?あんたら誰だっぺ?この辺では見ない顔だっぺが』

『彼らは生きた生物のそれもニンゲンよ』

『ニンゲン⁈』

『そうニンゲン』

『……』

まずいっ襲われる!カドミウムは骨を折ることができる毒だ。骨が折れられたら逃げられない!!!

『…そうだっぺか、なら、食事出さないといけないっぺな』

「「『なぜ⁈』」」

『なぜって…そりゃあんなにニンゲンに危害を加えたオラを電池だったり指輪だったりにして有効活用してくれたからっぺ。』

『そりゃそうだけど…』

『まぁそりゃ扱いは酷かった時もあるけどちょっとでも良く扱ってくれたニンゲンには感謝してるっぺ、少しでもその行為に報うことをするっぺ。あんたらもいいっぺよな?』

「あぁもちろ「いや毒が入れられていたらいけない」

『その点は大丈夫よ。カドミウムは基本優しいから。そんなことはしないわ、しかも殺るときはあのツルハシで殴り殺すのよ』

「ひぇ…」

『?何話してるっぺ?』

『なんでもないわ』

『お前ら…俺を置いてくなあああああああああ』

さっきまで頭を押さえて倒れていたタリウムがふと叫んだ。

『あら?もう少し寝てていいのよ?』

水銀はハンマーを構え直した。

『いや、なんでもない』

『あ、でもその前に一つやることがあるっぺ。ちょっとついてきて欲しいっぺな。』

「あー分かった」

「どこにいくん?」

『お客さんだっぺ』

首を傾げながらしばらくカドミウムについていくとところどころにパイプや機械がくっついた大きな建物が見えてきた。

「ここは…?」

『ポロニウム姉さんのラボだっぺ』

「すっげぇ!でっけぇ!」

(ポロニウム:聞き慣れない名前だが簡単に言うと放射線のこと。浴びたら無論、被曝したことになり放射線物質に中でもとても強い部類。使うこと自体危ないため、人工衛星の原子力電池として使われている。)

ガチャン、ギィイイイイイ…重々しく厚い扉が開いた。しかし、中は暗かった。

『まったく、引きこもりにも程があるわ。自分で光るからって何も窓までつけないとは…』

『アラ、タチガ滅多ニ来ナイカラデショ?』

さっきまで誰もいなかったはずの背後に頭にはロボットのようなヘルメットをつけた白衣姿の女がいた。

「「『『⁈』』」」

ただ一人カドミウムだけがキョトンとしている。

『何ソンナ大袈裟ニ驚クノヨ。ヒドイジャナイ。』

『そうだっぺ。あの画家も後ろに立つのが得意だっぺ。普通のことだっぺ。』

『放射能に背後を取られると毒とは言え不安になるのよ。』

「放射能?それって福島とかのやつ?」

「そうだな」

『フクシマだけではない。ロシアだったりアメリカだったりも放射能により、大変なことになった。』

「というか、ポロニウムって放射能ってことは俺たちやばいんじゃないのか?」

『安心スルトイイワ。私ハアナタタチガ来るルノヲ見テタカラ、放射線放出器のボタンヲシッカリ切ッテオイタワヨ。私ニハ息苦シクテ辛イケド…』

「おい、なぜ俺たちがだと分かった?俺たちは一言も言ってないけど」

『私ノ毒ハ力ヲ弱メテモ空気中ニハ含マレル。ソノ放射線ノ通ッタモノデソレガ何カ判断スルノヨ。』

「つまり、空気中の放射線に俺たちが触れたことで人間だと判断したのか」

『理解ガ早クテ助カルワ。』

「俺はずっと分かってないぜ?」

「多田野はこの世界に向いてないな」

『話がずれたっぺな。ほい、注文されたニッカド電池40個納品ですっぺ。』

『アリガトウ。イツモ助カルワ…ソレデ、ニンゲンハ始末スルノカシラ?』

『そうね』

『そうだ』

『なら…』

ガシャン!いきなり、ポロニウムの両手がハサミとなった。ハサミが開きその間から光が漏れる…

「危ないっ!!!」

そう言った直後ドーーーォォンと音がした。

「多田野っ!」

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