第24話 飾れた古い絵画5

「お母...さ...ん」

わなわなと震える瑠璃

「瑠璃、」

綾は瑠璃を気遣う。


「2人ともドレスの色が似合うわ。親子みたいよ。本当の、、」

美しく微笑む花蓮


その言葉に綾が口を開いた。

「どういうことよ!!花蓮、今まで連絡もしないで!」

頭を抱える綾


2人の眼差しを

「あの日ー...海堂家を出た後、当てもなくさまよってある公園のベンチにいたわ。」


ベンチに座る花蓮

膝の手に置く手をきゅっと握る。

「これでいいのよ。」



◇◇◇


(...龍之助さんは、昔から綾のことが好きだった。私と結婚したのは家の為、だけど龍之助さんに喜んでほしくて綾に瑠璃の教育係を頼んだ。私も親友の綾が傍にいてくれて嬉しいし、あの人が綾を見つめる瞳に少しでも隣にいる私が映っていれば、それで良かったの。)


だけど、あの人は一夜の関係とはいえ、別の女性との関係を持って子どもを作ってしまった。

自分でも抑えきれない感情が、心の奥底に渦巻いた。

瑠璃を置いていくのは躊躇いはあった。

でも、家を出る前に瑠璃と綾が仲睦まじくしてる姿を見て覚悟を決めた。


雨がポツと降り始める。

これからどうしよう。

ふいに雨が止んだ気がした。

傘を差されている。


「大丈夫ですか?ご婦人が傘も差さずに雨に濡れるのは、身体に毒ですよ。」


そこにいたのは桜井純

髪の毛を薄い茶色の髪色をして、グレーのスーツを着ていた。


「あなたは桜井家の」

純の方も花蓮に気がついた。

二人は美術界の個展で顔を合わせている。


純は花蓮を桜井家に連れていく。

タオルを渡して身体を拭くように伝える純。

花蓮の説明を聞いた純は、「そんなことが、僕の家なら、いつでもいてくれて良いですから。」

「ありがとうございます。」

ペコリと頭を下げる花蓮。


◇◇◇

しばらくしたのち、あの女性が亡くなって綾が後妻に入ったことを知った。

(そうだろうなと思ってたから、綾が後妻に入ったことに傷ついたなんてない。)


だけど、私の心に燻る感情はどこにぶつけたらいい?


蘭は子どもを1人残している。

私の心に悪魔が囁いた。


スッと花蓮は純の胸に飛び付く。

「か、花蓮さ?」

カアッと頬を染める。

「純さんお願いがあるの」


そっと彼の唇に自分の唇を重ねた。


ベッドの上で情事を交わす二人。


◇◇◇

情事後

「花蓮さん、お願いって何だい?」

純が尋ねる。

「君のお願いなら、何だって聞くよ。でなければこんなことしない。」

純の手が花蓮に頬を触れる。


『復讐よ。手伝ってくれるなら、桜井家を海堂家に並ぶ名門にして見せる』

花蓮は色っぽく微笑む。

◇◇◇


「復讐って...花蓮、あなた拓也君に何をする気よ。」

目の前にいる彼女は誰ー?

驚きのあまり上手く言葉が回らない。


「もう、いいわ!」

瑠璃は怒って部屋を出ていこうとする。

「瑠璃、今の私にこんなこと言う資格はないけど、成長した貴女を見れて嬉しかったわ。その色のドレスもよく似合っている」

口角をあげて母として接する花蓮

瑠璃は部屋を出ていく。


「瑠璃、」

追いかけようとする綾に後ろから、声をかけた。

「綾とも会えて嬉しかった。」

友としての言葉に胸がつまる。

「花蓮、私もよ。

でも、こんな形の再会で心境を吐露されても、私も瑠璃も混乱するだけよ。また、改めて話を」

首を振る花蓮

「今日、あなたたちに会ったのは、過去との決別の為。」


話そうとした時、純が声をかける。

「綾さん、龍之助氏がお探しでしたよ。」

「純さん、お連れしてあげて。」


「ちょ、、待って!花蓮」

腕をグイッと引っ張られて、部屋から連れ出される。


「バイバイ、綾」

そう言った彼女は少女時代のように笑う。


◇◇◇


純に腕を引かれる綾


「あなた、花蓮が何をしようとしてるか知ってるのね?」

無言のまま歩く純



「失礼、私の妻が何かしましたかな。」

後方から龍之助が声をかける。

グイッと綾を引っ張り、自分の方に引き寄せた。

「あなた、」


対峙する純は龍之助に敵意の瞳を向ける。


「いいえ、奥方が迷ってたようなので案内を」

ニッコリと微笑み、その場を去っていく。


呆然としてしまう。

「何かあったのか?瑠璃の様子がおかしかった。先に帰るとだけ言っていた。」


(そうだ、瑠璃!)

「今、上手く説明できない。先に帰って瑠璃のことを気にかけてあげて。私はタクシー広って帰るから。」

(今は1人になりたかった。)


そんな綾の様子に龍之助は無言のまま、海堂家の運転手に先に帰るように言った。


綾の手を引き桜井家を出ていく。

「ちょ、、龍之助?」

「俺も一緒に帰ろう。泣いているお前をほっとけない。」


綾は無意識に涙を流していた。


龍之助はそっと私を抱き寄せる。

(どうして、この人は私に向ける気遣いの半分でも花蓮に向けてはくれなかったんだろう。)


◇◇◇


帰りのタクシー

「そうか、花蓮が」

感情を感じさせない口調だ。

「ええ、」

眉を下げる綾

「お前が気に病むことじゃない。」


海堂家

自室に閉じ籠る瑠璃

ベッドの上で枕に顔を沈めている。


部屋の外で「姉さんどうしたの?」

弟の拓也が姉の瑠璃を気遣う。

今は返事をする気力もない。



◇◇◇


翌日、仕事中に龍之助の部屋に瑠璃が訪れた。

綾は画商の仕事が入っていて、その場にはいなかった。

「父さん、絵には技術と心どちらが大事だと思う?」

緊迫な空気の二人。

その場面を幼い拓也が目撃していた。


瑠璃は心と答えて欲しかった。

だが、龍之助の答えは決まっていた。

「技術だ。」


瑠璃と拓也はズキッと心の痛みを感じる。

「そうよね。期待した私バカだったわ。」


帰りの車内

仕事をしてないと重い感情に心を支配されそうだった。

スマホにメールが届く。


『綾さん、今までありがとう。

私も家を出ます。

私の為に母さんがいなくなったあとも、海堂家に残ってくれたのにゴメンね。

拓也のことお願い。父さんのことも、きっと支えられるのは綾さんだけだから。』


綾はスマホを持つ手が震える。


急いで家に戻ると、拓也は泣いていて、瑠璃が海堂家を去ったあとだった。


綾は全てが繋がる。

花蓮の目的は蘭の子の拓也から、大事なものを一つずつ奪っていくことだとー...




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