第19話 思い出
里山照子は子どもの時、海堂拓也と出会った。
彼は美術の名門、海堂家の息子。
私は美術会社の娘。絵を描くのに必要な画材道具を販売する会社のため、取引先である海堂家に幼いときから出入りしていた。
海堂家で行われるパーティーに参加したとき、初めて海堂瑠璃と拓也姉弟に出会った。
2人は容姿端麗でスターのようなオーラを放っていた。
周囲の大人たちが2人を見て、感嘆の声をあげる。
『ご息女の瑠璃さんは全日本美術コンクールに何度も入賞されるし、いずれ婿をとって海堂家を継がれるのでしょう。』
別の大人がひそひそと話している。
『ご当主が愛人に産ませた拓也さんがなるという噂もありますよ。』
私は大きな家に生まれるのって大変だなと子供ながらに感じていた。
◇◇◇
退屈だったから、海堂家の庭園の方を探検した。
テクテク歩いていくと、庭園にたどり着いた。見回すと草花は四季の花が咲いていて噴水もある。鳥の囀りも聴こえる。
まるで絵本の世界みたいだ。
泣き声が聞こえて、その場に行ってみると、男の子が座り込んで泣いていた。
「大丈夫?」
顔を見ると海堂拓也で驚いた。
「拓也、ここにいたのね。」
姉の瑠璃とも鉢合わせして、私は動きがとまる。
◇◇
時刻は現在
拓也と照子はお互いの想いを、絵にしてる最中だった。
スッケチブックにラフを描いていく。
昔のことを思い出して笑みを浮かべる。
「里山?」
「あなたたちと、初めてあったときを思い出したのよ。」
拓也は懐かしさに笑う。
「いろいろあったな。あの頃は。」
「拓也、長峰さんは大丈夫よ。あの瑠璃さんの子供よ?あの子の担任になったときは運命かと驚いたけど。」
ふふと笑った。
絵を描くことは心を落ち着かせてくれる。
拓也も照子も子供のころから変わらないものは、絵に対する想いだ。
◇◇
一方、愛花は拓也の家を飛び出したあと、義理の祖母の彩に連れられて海堂家の邸宅。なかでも母さんと拓也さんがお気に入りだった庭園にと来ていた。
(素敵な場所・・・気持ちが安らぐ。)
木のベンチがあり、二人でその場に座る。
「愛花ちゃん、瑠璃と拓也さん。照子さんの過去にあったこと聞きたい?」
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