第18話 暴かれた真実
海堂綾
血の繋がらない祖母。
そして母、瑠璃の絵の師匠と聞いた。
「愛花ちゃん」
彼女はバックからスケッチブックを渡す。
「これは?」
意図が読めずに困惑する。
「絵を描いてくれないかしら?ラフで構わないわ。」
桜井が疑問に問う。
「どういうことだ?」
綾は桜井に視線を向ける。
「貴方、桜井家のご子息ね。私は確かめたいの彼女の美術の才能をー...」
私の美術の才能...
瞼を閉じて、今まで出会った人たち。
絵が好きになった原点を思い出す。
「わかりました。」
私はサッサッとスケッチブックにラフ画を作成していくー...
◇◇◇
「出来ました。」
スケッチを綾に手渡す。
「ありがとう。これは...ハイビスカス」
綾は絵を見ると驚きに目を丸くする。
(瑠璃の絵にそっくり、まるで花がそこに咲いているように、この子の絵の実力は底知れない。)
「お前、本当にハイビスカス好きだよな。」
桜井は苦笑する。
「だって、私の絵の原点だもの。」
そう言って笑顔で話す顔も瑠璃と重なって胸がざわついた。
「愛花ちゃん、今日家に伺ってもいいかしら拓也さんにも話したいことがあるの。」
彼女の瞳がキラリと光った。
◇◇◇
自宅アトリエで、拓也が絵に色を塗っていた時にチャイムが鳴る。
誰だろう?とピンポーン。
ドアを開けると、今、一番会いたくない顔で溜め息をついた。
里山照子。
特徴的な天然パーマの髪の毛を後ろに結んで、ブルーのシャツにロングスカートの服装だった。
「人の顔を見て溜め息をつくなんて、拓也、私は未来の結婚相手なんだけど。」
僕は眉間に皺を寄せる。
「勝手に決めないでくれ。僕は結婚するなんて一言も、それに君はそんなキャラじゃないだろう?
何が目的なんだ。」
里山は僕を押し退けて、ズカズカとアトリエの方へ向かう。
「ちょ、勝手に。」
僕は慌てて里山の後を追う。
アトリエに無粋に入っていく。
スケッチブックをパラパラと捲っていく。
「私は貴方を解放しにきたのよ。実の姉の海堂瑠璃への執着から、」
スケッチブックには海堂瑠璃のスケッチが描かれていた。子どもの頃の記憶の姉から、母となってからの姉。
そして、生存してたらどんな顔立ちになってるかまで。
これが出来るのが海堂拓也の絵画の才能ー...
「私が知らないと思った?拓也」
里山は嘲笑う。
「...めろ」
拓也は冷や汗を浮かべる。
(止めろ!言うな!)
「貴方が長峰さんを引き取った本当の理由は...」
「娘である彼女に、姉の面影を見いだすためのモデルだったのよね?姉を失った寂しさを埋める為の、、」
「止めろー!!」
大声で叫び彼女を押し倒したー...
グッ
テーブルに置いてあったアトリエの絵画が弾みで散らばった。
「どういうことですか?拓也さん...」
拓也がアトリエの外に目をやると、帰宅した愛花が驚いて呟く。
彼女の後ろには義理の母の綾の姿もあった。
「っ.....」
声をだしたくても言葉が出てこない。
拓也は愛花を見つめるしかできなかった。
◇◇◇
どういうこと。
里山先生を押し倒している拓也さん。
私を引き取ったのは、母さんの面影を見いだせるモデルってー?
踵を返してその場から立ち去る。
綾は愛花のあとを追う前に拓哉に告げる。
「あなた達、喧嘩なら子どもがいない時間になさい。
教育上よくないわよ。
それと、拓也さん...愛花ちゃんは海堂家で預かるわ。」
綾がさも当然と告げるように話した。
「なっ?」
何を勝手にと言うような表情だ。
「あなたも早く海堂家を、継ぐ覚悟を決めなさい。」
里山を見る綾。
(これはその為には必要なことよ。)
綾は拓也の家を出ていく。
◇◇◇
「拓也」
先ほどとは違って、自分を気遣うように、里山が名前を呼ぶ。
「ごめんー...」
流石に彼女も愛花ちゃんがタイミングよく帰って来るとは思ってなかったようだ。
「いや、僕も手荒なマネをした。ごめん。」
2人で散らばった絵画を戻していく。
僕は昔を思い出していた。
里山とこうなってしまったのはいつからだろうー...?
「拓也、今の気持ちを絵に描きましょう。」
里山が告げる。
「結局、私たちは描くことでしか気持ちを伝えられない。」
里山の提案に僕はコクりとうなずいた。
◇◇◇
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