第16話 長い1日はゆっくりと終わる。

テーブルを挟んで向かい合う。

拓也と里山。

拓也はコホンと一息をついた。

「久しぶりだね。里山、それより説明してくれない?お見合いってどういう...」


グーとお腹のなる音がする。

「まずは食べましょう。お腹が空いたわ。」

拓也は里山のペースに引きずられた。

◇◇◇


サイゼリヤで食事を終えたあと、由利と健は寮へと帰還した。

「明日ね。愛花」

「またな」


2人は同じバスケ部だ。

気心がしれて、仲良くなるのも早いだろう。

夜道を桜井と愛花は一緒に帰る。

「愛花、進路の悩みがあるならいつでも聞く。」

穏やかに微笑む。

「ありがとう。桜井君」


家の玄関前で桜井君と別れた。


◇◇◇

ドアを開けると、拓也さんはまだ帰ってきていない。

もうすぐ午後8時だ。

愛花は自分の部屋へと戻る。


◇◇◇

食事をしながら拓也は里山に尋ねた。

「え?母さんに頼まれたのか。」

天ぷらを食べながら里山を頷く。

「ええ、拓也の結婚相手になってくれないかってね。」

里山と拓也は幼なじみで、学生時代からの付き合いだ。

全く溜め息を付く。

「私はいいわよ。なっても。」

その言葉にドキッとなる。

「里山?」


◇◇◇

夜の11時、拓也は帰宅した。

愛花ちゃんは寝ているだろう。

自分の部屋に到着後、ベッドに横たわる。

疲れたー...


里山の家は美術会社。海堂家の取引先。

だが、会社が潰れかけている。

融資のかわりに里山にお見合いを持ちかけた。

「断ったら融資をしないっていう脅しか、」

拓也は苦笑する。

「でも、私は家関係なく拓也と結婚してもいいと思ってるわ。」

そう微笑んだ。

「どうして、」

そう言うと里山は拓也にスッと近寄り、唇を重ねた。

「!!」


唇を解放されたあと拓也は頬を染める。

「な、なにを?」


「拓也、長峰さんの為でもあるのよ。結婚しても、私は彼女と拓也と3人で住んでもいいと思ってるわ。」


◇◇◇

様々な人間模様が動いた1日だった。

拓也は大きく溜め息をついた。

(今日は心身ともに疲れた。考えないといけない事が多すぎる。)

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