第13話 沖縄からの転校生
時刻は朝6時30分
〈リンリン〉
目覚ましの音で、目を覚ましてベッドから起きる。
朝食の準備をする為に早起きだ。
顔を洗って歯を磨いた。
セミロングの髪の毛をとかして、制服に着替えた。
高校の制服はセーラー服である。
中学入学する春休みに家庭の事情で、沖縄から東京の親戚に引き取られた。
現在は帝都学園の高校2年生。
エプロンをして、朝食の準備に取りかかる。
お米を炊き、鮭の切り身を焼く。
豆腐とワカメのお味噌汁を作る。
「おはよう。愛花ちゃん。いい匂いだね。」
この人は海堂拓也さん。ふんわりとした茶色の髪に白いシャツに青いジーンという姿が、とてもよく似合っていた。
美術の名門 海堂家の跡取りとも言われていた。
そして、私の亡くなった母の歳の離れた弟でもある。
まだ、28歳という若さながら海外のコンクールでも数々の賞をしている天才だ。
中1の時に家計がギリギリだった長峰家を救ってくれて、私に絵の楽しさを教えてくれた。
様々なものを教えてくれた拓也さんは、大切な人だ。
◇◇◇
二人で朝食をとる。
この時間は穏やかで好きだ。
「そう言えば択也さん。もうすぐ個展ですね?桜井君と一緒に観覧に行きますね。」
そのことに、嬉しそうに微笑む択也さん。
「愛花ちゃんと桜井君が仲良くなって嬉しいなと思ってー...」
中1の文化祭で桜井君と当時の美術部の部長と「絵に心が必要か」で対決をしたのである。
懐かしいことを思い出して、口元に手を当てて笑った。
「桜井君は高等部で美術部部長ですからね。」
◇◇◇
朝食を食べ終わり、食器を片付けたあと学校に行く準備をする。
「愛花ちゃん、今日は僕は夜に予定が入ってて夕食は外で済ませてくる。ごめん」
申し訳なさそうな顔で謝る択也さん。
その姿に勢いよく首を横に振った。
「そんな謝らないでください。択也さんだってお仕事です..し、」
択也さんが切なげに瞳を揺らす。
択也さんー...?
「なるべく早く帰るね。」
◇◇◇
学校に登校して、校内に入れば生徒たちの「おはよう」という声が響く。
私のクラスは2年A組だ。
「愛花、おはよう」
声をかけたのは髪をお団子にまとめている小柄な女の子。
〈坂野由利ちゃん。〉
昨年、同じクラスになって仲良くなった私の親友だ。
「おはよう、由利ちゃん」
席についてそうそう、前の席の彼女が口を開いた。
「愛花は彼氏作らないの?」
最近の話題はそればかりである。
彼女は恋の話が好きなのだ。
「えー私はそういうのは、まだいいかな。」
苦笑する。
「勿体ないよ。愛花は可愛いのに。」
そう言って褒めてくれる由利ちゃんに、笑みを浮かべた。
と言っても本気で興味がないのだ。
「桜井先輩は?」
「え、」
「普段、近寄りがたいけど、愛花には優しいと噂になってるよ。」とウィンクをしてくる。
そんなことになっているのか。
「桜井君は美術部の仲間よ。」
「と言いつつ、中学の時にもらったハイビスカスのネックレスを大切に持ってるじゃない。」
私は少し頬が赤くなる。
あれは絵を描くうえで、お守りのようなものだ。
「もう、この話はおしまい。」
由利ちゃんは頬を膨らませた。
私は今朝の拓也さんの様子が少し変だったことが気になってた。
(拓也さん...どうしたんだろう?)
◇◇◇
朝のHR。
担任の加藤大介先生。
某学園ドラマの担任のような風貌だ。
ドアをガラガラと開けて入ってきた。
「今日は皆に転校生を紹介するぞ。入って、」
(転校生?珍しいな。こんな時期に。)
季節は5月を過ぎていたからだ。
そう思って入ってきた転校生の顔を見て、私は仰天した。
クラスの女子がイケメンぶりに、キャーキャー言っている。
男子からは妬みの視線だ。
「相沢健です。よろしく」
席を思わず立った。
「たける?」
私を見つけると、彼は微笑んだ。
「久しぶり、愛花」
4年ぶりの沖縄の幼なじみとの対面だった。
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