第12話 13歳の誕生日。月日は流れて...

文化祭が終わって。

今日は12月25日。

私の13歳の誕生日。


放課後ー...

美術室の皆がお祝いをしてくれた。

「愛花ちゃん誕生日おめでとう。」

部長は新品の絵の具をプレゼントしてくれた。

「こんな効果なものいいんですか?」


「ええ。」

にっこりと微笑んだ部長。


「ありがとうございます。」

ペコリとお辞儀する。


家に戻る途中、桜井君が私に袋を渡す。

「?」

「誕生日って聞いたから。」

「ありがとう。開けていい?」


ワンポイントのハイビスカスがモチーフのネックレスが入っていた。

「うわあ、可愛い。ありがとう。桜井君。」

「喜んでもらえて良かった。」

笑顔で言われてキュンとした。


「また、来年ね。」

桜井君と別れて、愛花は家に帰宅した。

「ただいま。」

ドアを開けると拓也さんはお帰りと、キッチンからエプロン姿で出てきた。

いい匂いがしてある。

「今日は僕がごちそう作るから、愛花ちゃんは部屋で夕飯までゆっくりしてて。」

笑顔で言われて、私は照れながら「はい」と告げた。


自分の部屋に行ってから、制服から私服に着替えた。

髪を下ろして、白いニットと紺のスカートを着て桜井君からもらったハイビスカスのネックレスをつけた。


「鏡を見ながら、こんなに幸せでいいのかな?」

思わず呟いた。

幸せすぎる分、失った時が怖い愛花だった。


1時間ほど過ぎたあと、「愛花ちゃん電話だよ。」

下から拓也さんの声が聞こえた。

「はい。」

誰だろう?階段を降りる。

拓也さんは私の姿を見て一瞬目を丸くした。

「?」

気のせいだったかな。

ウィンクをされて受話器を受けとると、

「「愛花...誕生日おめでとう」」

父さんの声。

「父さん...」姉ちゃんおめでとう。空の声も聞こえる。

兄の優が愛花に告げる。

「愛花おめでとう。健はバスケ部に入ったぞ。愛花みたいに、夢中になれるものを見つけた。」

「健が...?」

幼なじみの顔が浮かぶ。良かったと心から思った。

弟の空が電話にでる。

「姉ちゃん僕、身体も少しずつ元気になったよ。」

明るい声音、涙がポロポロと流れてきた。

父さんが愛花も元気にやれよとだけ言って、電話を切る。

拓也さんは優しく目元を拭ってくれた。

「ごちそう食べよう。今日は愛花ちゃんの誕生日とクリスマス。ダブルのお祝いさ。」


ローストチキンにケーキ。様々なごちそうが並ぶ。

「愛花ちゃん、僕から誕生日。」

ある絵画をプレゼントした。

それは今の愛花の肖像画。

「すごい!まるで瓜二つ。ありがとう。拓也さん。」

「どういたしまして。ハイビスカスのネックレスはプレゼント?ビックリしたよ。」


ハイビスカスのネックレスも絵に描かれている。

「はい。」

「きっと、プレゼントしてくれた子は、愛花ちゃんが大事なんだと思うよ。」

優しく語りかける。


〈君はハイビスカスの花言葉がぴったり合う子だから...〉


沖縄から東京に来てはじめての誕生日。

私はこの日の出来事を忘れないだろう。


◇◇◇

月日は流れて4年後...

愛花は高校2年生になっていた。





****

注釈

今回で中学生編が終わり、次からは高校生編に入ります🌺

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