第11話ー③

文化祭当日ー校内は保護者の観覧、来客者、生徒で賑わっていた。

美術部が展覧する絵で投票を行うと学校の新聞部が記事にしたので、多くの人が見に来た。

それはそうだろう。

数々のコンクールを入賞してる桜井慎吾。

美術部の部長の絵だもの。見たいに決まってる。

(緊張しているのかしら。私...)

肩に手をポンと置かれた。


「あなたの絵も見に来てるのよ。長峰さん。」

「里山先生....」


先生の温もりを感じて、私は笑みを浮かべた。

「はい。」



桜井君が描いた絵。

青空に虹。一羽の鳥が飛んでる。

まるで、この教室が青空になったよう絵。


展覧してる人がすごいと興奮してる。

部長も「やるわね。彼...あれは海堂拓也の絵。」と感嘆している。


だけど、彼の絵に心がない。

そう感じるのはなぜだろう?


次は部長の絵。。

放課後の風景。美術部の仲間が笑いあっている。

笑い声が聞こえてくる。

高木愛美ーこの人も絵の天才だ。


部長の絵には、私も桜井君も描かれていた。

心を通わせるようにという願いもあるのだろう。

部長が私と桜井君を見てウィンクする。

私は桜井君と視線があって戸惑った。


「高木もやっぱ上手い。」「流石だ。部長」

やはり称賛を浴びている。


次は私の番、心臓がドキドキする。

そんな時、「大丈夫だよ。愛花ちゃん」と頭上から優しい声が降ってきた。


「拓也さん。」

スーツ姿だ。今日は美術連盟の仕事があると話していた。

見に来てくれたんだと思うと心がほころぶ。


私が描いた絵。

テーマは平和への祈り。

教会で少女が神に祈る。そこに光が射し込む。


周囲が騒然とする。

この絵を描いた私を見ている。

「あの、変ですか?」

首を静かに振る。

唯一、拓也さんだけが微笑んでいた。

愛花ちゃんは絵のレベルがメキメキ上達している。

「血の力は偉大って訳か。」

桜井がポツリと呟く。

拓也がそっと歩み寄る。


「桜井慎吾君だね?

君の絵は確かにレベルが高い。でも、心が伴わない絵に人の心は響かない。

ここの美術部で「心」を学んで見ないかい?

僕は学生時代に見つけられたんだ。この美術部で大切なものをー...」


顧問の里山は拓也の言葉を聞いて、学生時代を思いだして感慨深い気持ちになる。


結果的にこの投票は部長と桜井君が同票。

愛花が僅差の勝利となった。



放課後、桜井君は私に、「君には負けない」とだけ言って展示室を出ていく。

「あ、まだ、片付け終わってないでしょ。」

部長が桜井君に向かって声をあげる。

苦笑していると、「でも、確かに愛花ちゃんもレベルあげてるの分かったわ。私も負けないわよ。」と声をかけた。


愛花の絵を見て心が動かされた人が、ここにもいた。

広い屋敷の邸内。

秘書の一人が絵を見せた人物ー

海堂家の当主、拓也の父であり愛花の祖父である。





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