第3話 ここから始まる。

羽田空港に到着した。

空港には人が溢れていた。

私は拓也さんの姿を探す。


「愛花ちゃん!」


振り向くと拓也さんは品のいいブルーのポロシャツを着ていた。

昔から変わらない穏やかな雰囲気だ。


「拓也さん。今日からよろしくお願いします。」ペコリと頭を下げる。

きょとんとしている。


ぷっと笑う拓也さん。

「かしこまらないで。

僕と愛花ちゃんは同じ家で暮らす家族になるんだから。

白いワンピース似合ってる。」

ワンピースを褒められたことに赤面する。

「ありがとうございます。」


拓也さんが運転する車の助手席に座りながら、私は窓の景色を見る。


車が止まる。

 ここが僕の家。外を見ると古民家風のアトリエ。

そして、今日から愛花ちゃんの家でもある。

 「すごい。」

たくさんの風景画が飾ってあり、私は感動していた。

拓也さんの絵は昔から心を動かす。


そんな愛花の様子を見て拓也は微笑む。


 ここが愛花ちゃんの部屋だよ。

ジブリのキキが住んでいたような部屋で、私は笑顔になる。

「ごめんね。こんな部屋しかなくて。」

拓也は髪をわさわさかく。


「いえいえ、私はジブリのキキの家に憧れてたんです。」


 「愛花ちゃん。部屋でゆっくりして、夜ご飯は一緒に食べよう。」

 

 愛花は荷物を置いた。そして、部屋のベッドに寝転んだ。


〈ここから始まるー...私の生活が。〉

愛花は決意を新たなにする。


 夜になり「コンコン」と、ドアをノックする音が聞こえる。

「はい。」


ドアを開けると拓也さんが呼びにきた。

 「愛花ちゃん。夜ご飯出来たよ。一緒に食べよう。」



 愛花は荷物を置いた。そして、部屋のベッドに寝転んだ。


〈ここから始まるー...私の生活が。〉

愛花は決意を新たなにする。


 コンコン

ドアを叩く音で愛花は目覚めた。

ハッ、あのまま寝てしまったんだ。

慌てて飛び起きてドアを開ける。


「夜ご飯出来たから一緒に食べよう?」

柔らかい表情の拓也さん。

気にかけてもらえてる嬉しさに、私は顔が綻ぶ。

「はい。」



2階の部屋から階段を降り、和風のダイニングに来るとテーブルには二人分のハンバーグとごはんが置かれている。

温かい湯気が登っている。


「ハンバーグだ!」

私は目をキラキラさせる。何故ならハンバーグが大好物だからだ。


2人は席に着席する。

「いただきます。」

挨拶してから、ハンバーグをパクっと口に運ぶ。

肉汁がじゅうと口に広がり笑顔になる。

(この味、お母さんのハンバーグだ。)

そんな私を見て、拓也さんがにこにこしている。

「?」

「愛花ちゃんもハンバーグ好きなんだと思って。

姉さんも好きでね。

昔、一緒に作ったことあるんだ。」

懐かしむ目をしている。

 

「拓也さん、私にも作り方を教えてください。」

真剣な顔でお願いする。

「え?」

「私もお母さんの味を受け継ぎたいんです。」


拓也さんはふふと笑う。

「喜んで。

そうだ。愛花ちゃん。4月から中学生だね。

僕が春休みの間、東京を案内してあげるよ。」


「ありがとうございます。」

ペコリと頭をさげる。


沖縄から東京に来た1日目の夜。

拓也さんと一緒に食べたハンバーグの味を、私は忘れないだろう。


私は4月から東京の中学に入学する。













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