第18話 異能者たちの叫び

樹里は数珠に霊力をためていく。

その姿を見て、亜樹は残念そうにため息をついた。

「はあ、残念だよ。樹里、君なら僕の考えを分かってくれると思ったのに。」

渚は亜樹を見て身震いをした。

(この人、どれだけの異能を体内に持っているの。)

「だけど…お友達はどうかな?」

亜樹の瞳が渚をとらえた。

「!」

「渚、耳を貸すな。」

樹里が渚を庇うように前に立つ。

「君も異能の力があったことで、傷ついた過去があったんじゃないのかい?」

亜樹の口元がニヤリと笑みを浮かべる。

「私は、私は…」

渚は没落した異能者の村出身、異能者を恐れた人間により、家族も殺されて村を滅ぼされた過去を持つ。

立ち退きを求める人間の声を聞かず、能力を使って紛い物の村を作っていた過去を持つ。

◇◇◇


楓とほたるは、春雷と時雨と対峙した。

二人は炎と雷の一族の分家の出身。

しかし、年下の二人に雷の宮司、炎の巫女の地位を奪われ悶々とした日々を過ごしていた。

分家の人間にとって、宮司と巫女の地位になれなかったら、役立たずも同じだった。

そんな時、亜樹と出会い共感して共に行く道を選んだ。


2人が放つ炎と雷の技が楓とほたるに迫る。

2人は手を繋いで、瞼を閉じて異能の力を解放させた。

最大限まで能力を解放させる。

『雷炎弾』


雷と炎の合わせ技が、春雷と時雨の放つ技を飲み込み二人を倒した。


吹き飛んだ二人

「クッ」

「信じられない」


「本家も分家も関係ねえ、能力をいい方に使って分家のルールを変えちまえ!!」

「この異能の力で、得たものも大きいんです。」

楓とほたるはそれだけ言うと先を急いだ。

◇◇◇


千樹はひしぎの繰り出す水の技を華麗に避ける。


「わかりませんね。それだけの力を持ちながらになぜ亜樹に力を貸すのですか?」

千樹はひしぎの心を読む。


ひしぎは能力の強さのせいで、母親を死なせた過去を持つ。

そんな時、亜樹に制御印を施されて共に歩むようになる。

母しか頼れる身内のいなかったひしぎは、亜樹と一緒にいることで1人ではなかった。


「君...、」

再度、水の攻撃を仕掛けるひしぎ。

千樹は念呪縛を繰り出す。

「グッ、」


「ひしぎさん、念呪縛が解けたら亜樹の元に行ってください。もしかしたら、君が亜樹の心を救う鍵になるかもしれません。」

穏やかに微笑む千樹。

「何をー?」


後ろから2人分の足音が聞こえる。


◇◇◇


「無事だったんですね。」

「流石だな。千樹さん」

楓とほたるの言葉に千樹は微笑む。


先の方で地鳴りのような轟音が聞こえる。

「急ぎましょう。」

千樹の言葉に頷き3人は走った。


◇◇◇

渚は額にある制御印が解かれて、凄まじい波動が溢れでる。

「グッ」

(まずい、制御印が)

「渚、落ちつけ!」



渚が手をかざして、樹里に向けて衝撃波を放つ。

咄嗟に結界を張って避ける樹里。

亜樹が渚の力を見てぷっと吹き出す。

「樹里、君、とんでもない子を飼い慣らしていたね。」


亜樹は五芳星の印にいる為、攻撃は受けない。

(やはり、そういうことか。)



◇◇◇

「一体、どうなって、何で渚と樹里が??」

到着した楓が疑問を呈する。

千樹とほたるが亜樹の目的に気がつく。

「まさか!?」

「亜樹!!君、」


ニヤリと笑う亜樹

「気がついたようだね。

彼女と闘いたくないだろう?

樹里、楓、ほたる。五芒星の印の上に立つんだ。」


「汚すぎるだろ!亜樹」

「卑怯すぎます。」

楓とほたるが批判する。


「樹里、」

千樹は意志を問う。


樹里が渚を見つめる。

(渚ー...)


亜樹は静かに告げる。

「望みが叶うなら、どんな卑怯になってもかまわない。」


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