第17話 友だち

樹里は渚たちと無事合流できた。

「久しぶりだね。樹里」

千樹は樹里に笑みをむける。

念話を通して連絡をとってはいたが、実に6年ぶりの再会であった。


5人を乗せた鳥の式神は上空から勢いよく下降する。

「そうだな。だが、再会を喜ぶのはあとだ。地下迷宮に急ぐぞ!」

「地下迷宮?」

渚が疑問を呈した。


「地下迷宮に五芒星呪法の発動の印があるってことか?」

楓が眉間に皺をよせる。

樹里がうなずく。

「だけど、亜樹さん側の動きが静かなのも気がかりです。」

ほたるが楓に続く。

渚が不安を蹴散らすように告げた。

「大丈夫!私と樹里様が揃えば百人力です。」


全員の心に暖かい日差しが心に差し込む。

「樹里、良い付き人を持ったね。」

千樹の言葉に樹里が反論した。

「付き人じゃない。」

樹里の言葉にガーンとなって思考停止する。

「え?」


樹里ははじめてあった日から、一族の崩壊後に一緒に旅をしてきた日々を思い出す。

どんな時でも自分を信じてくれた彼女がいたから、今までやってこれたのだ。



「私と渚は友達だ。」

はにかむように笑う樹里。

「樹里様・・・・」

渚は頬を染める。

◇◇◇



一堂が地下迷宮に到着して、式神は姿を消す。

発動の印がある扉は奥にある。

5人が歩みを進めると、正面から黒い炎と雷の攻撃が飛んできた。

樹里と渚、千樹は結界を張り楓とほたるが炎と雷の技で相殺した。


2人の人影が姿を現した。

黒の炎使いの時雨は髪色はピンクで、髪を二つに結んでいる。

そして特徴的な黒い巫女装束を着ている。


「この先にはいかせないわ。ねえ?春雷しゅんらい

黒い宮司衣装を着こんだ春雷はコクリと頷く。


「まさか、テメーらとはな。」

楓はほたると視線を合わせる。

意図に気が付いたほたるは、信頼の眼差しを向ける。

「先に行ってください。足止めは私たちが!」


樹里は2人を見つめて「わっかた。行くぞ!渚、千樹」と声をかける。


「でも…」

渚は躊躇する。

「いいから行け!」

「私たちは後から合流します。」

楓とほたるは3人を先に進むように進言する。


千樹は2人を見て、渚に声をかける。

「行きましょう。渚さん。」


グッと拳を握る渚。

覚悟を決める渚。

「楓、ほたるちゃん、先に行って待ってるから。」

その言葉に笑みを浮かべる2人。


◇◇◇


時雨が妖艶な笑みを浮かべる。

「舐められたものね?あんた達二人だけで勝てると思ってる訳」

「殺しはしない。動きを抑えて、地下迷宮に連れていくだけだ。」

春雷はツンツンと生えている茶髪の髪をクシャリと掴む。


「そりゃ、こっちの台詞だ。」

楓でにほたるは念話で話す。

『楓アレをやるよ』


楓は驚いてほたるを見る。

覚悟を決めた眼差しに、楓は強く頷いた。

◇◇◇


3人が進んでいると、後方からドッカーンと爆発音が聞こえる。

思わず渚が振り向く。

樹里は振り返らずに進む。

千樹は肩にポンっと手を置く。

「渚さん。私の修行に耐えた2人ですから、大丈夫ですよ。」

笑みを浮かべる。

「千樹さん。」

眉を下げる渚。

「それに本当に、一目散に助けに行きたいのも樹里なんだ。」

渚が樹里を見ると拳を握りしめてるのがわかる。


前方から大量の水の攻撃が迫ってくる。

千樹は樹里と渚は印を結んで結界を張る。

迫ってきた水が力を結界に遮られて威力を失う。

水の宮司、ひしぎである。

表情をピクリと動かさない。

(あの額の制御印ー...)

「樹里様、私に行かせてください。」

「ここは私が引き受ける。だから、樹里と渚さんは早く五芒星の発動を阻止に動いて欲しい。」

「千樹さん!!」

どうして

「渚さん、あなたには樹里を見守って欲しい。付き人としてでななくー樹里の友として、共に闘って欲しい。」

意思の強い目を向けられる。

「千樹...さっ」

涙が溢れそうになるのを耐える渚

「分かりました。」


樹里は千樹にたった一言告げる。

「千樹」 

「?」

「信じてるから」


二人は先に進む。

◇◇◇


「君はどうして亜樹に従う?水の宮司の一族は代々続く名家だ。」

今まで無言のままのひしぎが口を開いた。

「これしか道がない。」


ひしぎから凄まじい波動があふれだす。

(結局、闘うしかない。これしか道がない。)

千分は運命に皮肉めいた笑みを向ける。


◇◇◇


2人は先に進む先に、地下迷宮の扉が見える。

「渚、伝えておきたいことがある。亜樹を止められるかはお前にかかってる。一緒に闘ってくれるか?」

「もちろん、出なきゃここまで来ませんよ。」

明るくウィンクをした。

◇◇◇

樹里の説明を聞く渚

「また、無茶苦茶ですね」

苦笑する渚。

「だけど、それでこそ樹里様ですし、私がいるんです。」

笑顔で答える渚

「ありがとう」


扉を開くと五芳星の中心地に、宮司の衣装に身を包む亜樹が穏やかに笑う。

「お友達との語らいは終わったかい?樹里」

亜樹の言葉に樹里は数珠を手に持つ。

「最終決戦だな。亜樹

私はあなたの目的を止めてみせる。」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る