第13話 真実の奥の奥
樹里は瞼をゆっくりと開いた。
見知らぬ天井、そこは水晶で出来たシャンデリア。部屋には調度品が誂えている。
ここは?と意識を少しずつ覚醒させた。
「そうだ!私、亜樹と闘って」
慌てて身を起こした。
いつの間にか樹里は巫女装束を着ていた。
あの筧一族の崩壊以来、二度と袖を通すことはしまいと誓いを立てていたのに、随分と悪趣味な真似をしてくれるじゃないか。
亜樹..
さしあたり、この扉は結界が張ってあり、霊力を消費しないと開かないだろう。
手を翳し、亜樹との闘いで霊力をギリギリまで使いきった。
通常時の30%も出ない。
完全に回復するまでは、2週間というところか。
だけど...
「念話が出来るのは幸いしたな。」
髪に耳をかけ、渚の波動を感知して思念へと語りかける。
『渚』
◇◇◇
同時刻ー..
「樹里様の過去にそんなことが、」
切なそうに話す渚の言葉に、蛍も楓も眉を下げた。
千樹は3人に穏やかに微笑む。
「渚さん 蛍さん 楓くん。
そんな悲しい顔をしないでください。
君達は前を向く力を、再び歩き出す為の力を樹里にくれたんですよ。
それはとても尊いものだと思います。」
蛍は胸をぎゅっと掴む。
「だけど、亜樹さんが五芒星の呪法をしようとしてる理由は何なんでしょうか?」
蛍はツインテールの髪を揺らした。
「俺も気になるな。6年前に樹里に刃で貫かれたから、自身の不老不死を望んでんのか?」
蛍と楓の疑問に答えようと千樹が口を開いた瞬間のこと。
『渚!私だ。』
樹里様の声が響いた。
「樹里..様」
念話が繋がった。無事だったという安堵して、「よ、良かった~」
涙をポロポロと流す。
一同が樹里と連絡がついたことに、ホッと安堵した。
渚の泣き声が聞こえ、樹里は自分のことを心配してくれる人の為にも、絶好に負けないと己を震いたたせる。
『私は無事だから。落ち着いて。
今は近くには誰がいる?』
樹里の冷静沈着な声色に、渚は落ち着きを取り戻した。
『楓と蛍ちゃん、大樹さん。そして千樹さんです。』
『千樹が?』
樹里様は何やら考えこんでいる。
『渚、この念話の範囲を広げろ。その場にいる者たちに私の声が届くようにしてくれ。」
樹里のテキパキした指示に渚は、クスッと笑った。
『了解です。』
◇◇◇
念話はこの場にいる人たちに聞こえるように対象を広げる。
『久しぶりだな。千樹...元気そうで何よりだ。』
旧友を労う声色だった。
『樹里、そこから脱出は出来そう?』
千樹は樹里に尋ねた。
『いや、無理だ。扉に結界が張ってあり外には出れない。それに、霊力が戻りきってないしな。だが、2週間もすれば100%の状態に戻る。』
千樹は笑みを浮かべた。
『それじゃ、2週間後に最終決戦といこう。』
樹里は千樹に同意した。
『OK、それまでに渚、楓、蛍を鍛えてやって』
楽しげな声音が聞こえてくる。
楓が割って入った。
『待ってくれ!修行はいいが亜樹の真の目的を教えてくれ。』
千樹が黙ったままの大樹の方を見つめる。
『大樹、亜樹に何があったか話してくれないか?一族の崩壊後、負傷した亜樹と会ってるんじゃないか?』
大樹は瞼を閉じた。
「すべて話そう。今話されたことは真実の表側にすぎん」
一同、真摯な表情ー...
水晶城
亜樹の自室
ベッドに横になったままの亜樹。
感情は悟らせない瞳で一点を見つめていた。
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