第11話ー④
樹里は分家の屋敷の邸宅にて座りこむ。
(亜樹を殺すー?私が...)
心が叫ぶ。
〈嫌だー...殺したくない。〉
桜の木の下で、亜樹と私、千樹も入れて笑いあった日々を想って唇を噛み締めた。
樹里が屋敷に入りこんでる間ー...
千樹は外で見守っていた。
そこに眉を下げた大樹が現れた。
「大樹殿...」
「亜樹殿は一族の者たちを救う為に、自分の父を滅ぼそうとしてる。」
大樹は身を翻す。
「どちらへ!?」
千樹は尋ねた。
「当主からの命令だ。
一族の統治する街の長に就任するように...それが樹里殿や亜樹殿を救うと。」
空は曇天、今にも嵐が来そうな気配だ。
「大樹殿ー...」
「また、いつの日か会おう。」
◇◇◇
刻は現在。
「一息つきましょうか。」
千樹は重苦しい空気を払うように明るく話す。
「そうじゃな。」と紅茶を一口飲む大樹。
渚が樹里を想って眉間に皺を寄せる。
「樹里様...」
ほたるも楓も樹里と亜樹の背負った運命に、表情を固くする。
千樹は3人を見て優しく微笑んだ。
「そんな顔をしないでください。あなた達の存在は樹里にとって、立ち向かう為の希望に、再び歩き出す為の原動力になったんですから....」
ほたるは千樹の言葉に目を丸くする。
「私たちの存在が?」
「どういうことだ?」と楓は問う。
渚は胸に手を当て深呼吸をした。
その後、千樹を真っ直ぐ見据える。
「続きをお願いします。」
千樹にペコリと頭を下げる。
◇◇◇
千樹は再度、過去の続きを話した。
分家の邸宅で座り混んでいた樹里は、数日前に闘いを教えてくれと頼み込んできた。
雷の宮司の楓、炎の巫女のほたる。
没落した村の異能者の子.渚の存在を思い出していた。
〈筧一族〉
能力者の中でも強い権力を持つ一族だ。
本家と分家の争いは絶えない。
「だけど、そんな一族でも守れる存在があるのも確かだ。」
一族がなくなったら、能力者の子は迫害を受けて居場所を失う。
沈んでいた目に強い光が備わる。
樹里が邸宅のドアを開けて外へと出た。
1日中考え混んでいたのだろう。
すっかり夜明けだ。
だが、朝日ではなく、外は曇天で雨がポツポツと降ってきた。
「樹里...」
千樹は目にクマが出来ていた。
一晩中起きていたのだろうが、その優しさに苦笑した。
「行こう。亜樹をとめる。」
「ああ。」
殺すではなく止めるんだー...
2人は本家へと急いだ。
◇◇◇
亜樹は水晶の城の自室にいた。
ベッドへと横たわる。
後ろに結んでいるゴムがほどかれ、長い髪がゆらめいた。
あの日、僕は筧一族の当主が主語する秘宝。
大地の力で作った大地剣を使って、一族を無に返すと決めた。
本家とか分家の対立とか興味がなかった。
ただ、大切な人と笑いあえる日常が欲しかった。
母の死にギリギリの精神で耐えていたものが、傷を負った樹里を見て崩壊した。
◇◇◇
本家の宝物殿。
中年の見張りの侍従が2人。
「誰だ!」
「お前は金の宮司..」
亜樹は能力を使い金の鎖で侍従二人を気絶させた。
バタリと倒れる。
(本家の宝物殿を守る侍従が、この程度の力とはね。)
亜樹は宝物殿の中に入り、大地剣が保管してある部屋へと向かった。
結界が張ってある。
解こうと印を結んだ瞬間に、風の刃が襲ってきた。
亜樹は結界を張って攻撃を避けた。
強力な波動を感じる。
(この波動はー...)
「大地剣が欲しかったら、私を倒してからにするがよい。」
紫の長髪は樹里のようで、長い髪を結んでる姿は自分のようだ。
宮司の衣装に身を包み、ゆっくりとこちらに向かってきた。
未来を見通す力を持って同時に風の力をも操る。
〈一族当主..筧雨樹ー...〉
顔を見た瞬間に苛立ちが襲って、憎しみの眼差しをぶつけた。
「父上。」
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