第11話ー③

分家の神社の邸宅。

届け物を頼まれた。

そのあと人間に取り付いた怨霊が、樹里を襲ってきた。油断して一太刀浴びてしまった。

即返り討ちにして浄化してやったが、今はその神社の境内で傷の箇所をヒーリングしている。

「明らかに罠の匂いがプンプンだったな。」

だが、こうまでしないと、本家の人間が分家の土地には入りにくい。

亜樹にも接触は難しい。


突如、ガサッという物音がする。

「樹里...?どうして、此処に。その傷はー...」

宮司の姿の亜樹だ。

久しぶりに見た亜樹は酷く沈んでいた。

「あ、これは不覚を取っただけ。ヒーリングで治せるし問題ない...」

笑ってごまかす。

亜樹は樹里の顔を見て、顔を歪ませて覚悟を決めた顔だ。

小さな声で呟いた。

「...しかない。」

「え?亜樹、なにを。」


亜樹は樹里の腕を引いて慈しむように抱き締めた。

(本家とか分家とか関係なく、一族の者が自由に生きられるようにする。その為には...)


「滅ぼすしかない。」

亜樹は樹里に念呪縛をかけて眠らせた。


優しくその場に寝かせる亜樹。


本家とか分家とか関係なく、自由に暮らせるようになる。

笑いあってどんなに素晴らしいことだろう。


「解!」

千樹が亜樹が樹里にかけた念呪縛を解く。

「樹里!樹里!」

眠っていた樹里が目を覚ました。


「千樹?」意識が覚醒していく。


「「滅ぼすしかない。」」


亜樹の言葉が耳に残っている。

「千樹、亜樹が!」

すがり付くように樹里の指が震えている。

「樹里、これから、君に伝えることは酷かもしれない。当主様からの伝言だ。」


亜樹は一族の者を自由にする為に、本家にある秘宝を手に入れようとしている。


「その為に秘宝の番人の父上を殺すか。で、私に亜樹と闘えと?」

苦笑する樹里。


「いや、殺せとおっしゃった。一族の者は自由になっても世界が滅ぶから。」

葛藤する樹里。


「...千樹、明日だよな?一晩考えさせて。」


分家の邸宅に入り込む。

「ああ...」


筧一族の崩壊まで残り1日。


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