第11話ー②

千樹の話を聞く渚、ほたる、楓。

大樹も過去を思い出している瞳ー...


「樹理が18歳の歳に、筧一族が所有する神社の巫女を任されました。

ある日、異能者の子を救った帰りに私は樹理と会いました。」


異能者の子ー

私と出逢った日だと渚は思う。


「没落した異能者の村に居座る子を、よく説得できたな樹理。」


神社の一卓で千樹と樹理はお茶を飲む。

2人は宮司と巫女の姿。

フッ「あの子は強くなるさ。しばらくは異能の制御の為に能力者施設に入れている。

強くなったら私の付き人をしたいと言ってたな。」

優しく笑っている。


「ところで亜樹とは最近会ってないのか?」

樹理は眉間に皺を寄せる。

「なぜ、そんなことを聞く?」

私は冷や汗をたらす。

「いや、」

千樹の表情を見て樹理は苦笑する。

「確かに亜樹が自分の異母兄と分かるまでは、淡い想いは抱いていたけど、今はそんな感情はないさ。

癒されていたのは血の繋がりゆえだったんだろう。」

達観している。


「だが、最近はてんで姿を見せないな。

一族の分家で何か動きがあるのかも。」

考えこむ樹理の手を千樹は包む。


本家の子の樹理、分家の子の亜樹。

一族の勢力図。

二人が大地の巫女。金の宮司であるかぎり、対立は宿命だ。

「私が調べておくよ。樹理。」



 分家、亜樹の邸宅には寝込んでいる母。

「亜..樹」

「母上...」

黒い長髪。痩せ細った身体。

もう長くないことを悟る。


亜樹の母を見ていたのは、当時、分家の医師の一人。大樹。


「あなたを...本家の子に産んであげたかった...」

それだけを言うと、ゆっくりと目を閉じた。

掴んでいた手に力がなくなる。


どれくらいそうしていただろう。

「亜樹殿....」

「千樹さん、今日まで母上を診てくれてありがとう。」


悲しげに微笑んでいた。


その部屋に筧一族の分家の重鎮がズカズカと入り込む。

「ようやく、逝ったか。」

重鎮の一言に大樹は激昂する。

「何てことを!!」

大樹を静かにとめる。


「何のご用ですか?重鎮方。」

「我々は本家を乗っとるつもりだ。亜樹よ。力を貸せ。」

そのうちの一人がニヤリと笑う。

「乗っとりたいなら、ご自身の力でどうぞ。僕は謀反の手助けはしない。」


部屋を立ち去ろうとした亜樹に、重鎮の一人はつげる。

「よいのか?このままでは、そなたの妹は本家に縛られたままだぞ。」


一族の崩壊への序曲は、この時から既にはじまっていたのだ。


 その頃、本家の邸宅にて、千樹は樹理と亜樹の父である当主からの言葉に愕然としていた。


「は?今なんておっしゃいました。」

「何ども言わせるな。私は3日後に死ぬ。亜樹の手によってな。」


筧一族当主、筧雨樹。大地の力を借りて未来を見通す力を持つ。

「それなら、尚更、止めねばなりませぬ。」

「千樹、これは宿命だ。」

言葉につまると、当主は私に言伝てを頼んだ。

「樹理に伝言を頼む。」


翌日、樹理にその事を伝える為に居住地の神社へと向かった。

女性の侍従に訪ねる。樹理はどちらに?

「分家の者の依頼がありまして。分家が所有する神社の邸宅に向かいました。」


(しまった!これは罠だ。)


樹理、亜樹、千樹。

その日、それぞれの運命が交差した。


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