第11話ー①
千樹は樹里がこそこそ抜け出して、会っている存在が気になっていた。
この日も巫女装束を着込んでいる樹里が、屋敷を抜け出しているのを見つけてあとを尾行した。
桜の木の下で樹里が男性と話しているのを見た。
その男性を見つめる樹里の瞳が、色恋めいた色をしているのに気がついた。
そして男性の方も、樹理を愛しい瞳で見つめていた。
「今日は樹理以外にもお客様がいるみたいだね。」
「え?」
ビクリとするも、ハァーと溜め息をもらして私は2人の前に姿を表した。
「千樹?!どうしてここに。」
私は樹理の質問には答えず、男に名前を尋ねる。
「君の名前は?」
「筧...亜樹...」
桜の花びらがぶわぁと舞散る。
そんな春の終わりの頃だった。
樹理が15歳。亜樹が18歳。
運命の歯車はカタカタとまわり始めていた。
「何?樹理と亜樹が...」
考えこむ筧一族の当主。
「千樹、二人を鍛えてやれ。」
それから、私は樹理と亜樹の指導役を仰せ付かった。
金の宮司の亜樹、大地の巫女の樹理。
本来は交わることは出来ない間、修行後に野原で穏やかに笑っている二人。
心にズキンと痛みが走る千樹...
それから3年後、亜樹が21歳。樹理が18歳の年に一族の崩壊が始まったのである。
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