第7話 約束の印

渚は目を閉じて集中して耳をすませた。

大きな波動を持つ者が2人、いや...3人?近づいてることに気がついた。


「樹里様。こちらに近づいてくる人物が3名ほどいます!」


楓と蛍は焦りの表情だ。

「3人もかよ!」

楓はチッと舌打ちをした。

ほたるはガクガクと震えている。



「恐らく、3人のうちの1人は亜樹だろう。

私が相手をする。」

再び覚悟を決めた眼差し。


樹里は自分の胸に手を置いて、呪文を唱える。

するとふわぁぁと光に包まれた。


ぽんッと石を出して、渚に手渡した。


その石はエメラルドグリーン。

周囲にはピンクの花びらが舞っている。


「これは?」

渚が質問する。

楓とほたるは、渡された石を見た瞬間にギョッとした。

「なっ?能力の源でもある樹霊石を本気か樹里!!」

楓の言葉にほたるも続く。

「樹霊石なしで、亜樹さんと闘うつもりですか?!」


樹里は二人を見てフッと微笑む。


「渚、お前は楓とほたるの2人を守ってくれ。そして、敵わない相手が来たら即時撤退することだ。」


闘いの場に向かう樹里の背中を見ていると、渚は樹里が消えてなくなるような気がして、あわてて樹里の腕を掴んだ。


パシッ。

「渚?」

「...樹里様、今日はショッピング行く予定でしたよね?」

下を向いたまま話す渚。

樹里も楓もほたるも渚の言葉に、意図を察しかね目を丸くしている。


顔を上げた渚は微笑んで告げる。

「...全てが終わったら、皆で旅行いきましょうね。約束ですよ。」

約束のサインに小指を出す。


これは生へと繋ぎとめる為の約束だ。

樹里様は守れない約束はしない...


「...ショッピングは約束できないが、全てが終わったら旅行は行くぞ。」

樹里は笑みを浮かべた。


樹里は渚の小指と自分の小指を結ぶ。

《約束の証として。》


樹里が闘いの場へと向かったあと。

渚は不安気な面持ちだ。


楓が呟く。

「オレたちは能力を具現化した石を、体内に持っている。

樹霊石は樹里の能力の命の源だ。

それを預けてるってことは、お前は樹里に信頼されてるってことだ。」


「...楓」

笑顔になる渚。

呼び捨てかよと思うが、渚の喜んだ顔を見てこいつならいいかと思う楓であった。


「樹里さんは渚さんに出会って、柔らかくなってると思います。」

ほたるも優しい表情になる。


「ほたるちゃん..」


渚は樹里の言葉を思い出して、必ず2人を守り抜くと心に決めた。



 樹里は森を抜けた先の岩に乗って、水晶で作られた城を見つけた。


(ーあれか!)


後ろから誰かが近づいてくる気配がして、樹里は振り向いた。


長い黒い髪を結び、白いワイシャツにブルーのジーンズ。

薄いグリーンのショールを羽織っている。


昔と変わらない。自分と同じ緑色の瞳。


「久しぶりだね。樹里ー...」


樹里と亜樹。

宿命を背負った兄妹。


6年ぶりの再会であった。

運命の刻が再び動いた日。



































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る