第6話 日だまりのような人

樹里の異母兄ー...

筧亜樹はある目的の為に、《大樹の街》の森の奥に結界を張り、この街の樹霊の力で城を建てた。

水晶で出来た城。僕が朽ちない限りは、壊れることはない。


 黒い長髪を後ろで結んで、白いワイシャツにブルーのジーンズにショールを羽織っていた。

 窓から外の景色を見ていた時。結界が破かれたことを感じた。


「....誰かが僕の結界をー...」


後ろには、水色の髪を真ん中に分けて、額に菱形の印が浮き出ている。

寡黙な男性がいた。


「亜樹様、結界を解いたのは、

《大樹の巫女》あなたの妹君です。」


そう答えたのは、水神ひしぎ。

水を司る宮司である。

宮司の衣装を着込んでいた。


(樹里...迎えに行く前に来てくれるとは、嬉しい限りだよ。)

亜樹は内心で樹里のことを思った。

知らず知らずに、6年前に彼女に貫かれた腹部を抑えた。


「ひしぎ。楓とほたるはどうしている?」

城に連れてきた2人の様子を尋ねる。


その言葉に、若干眉間を下げる。

「申し訳ありません。

城から脱走をしたようです。」


ひしぎの様子を見て、クスと笑みを浮かべた。

「別に責めちゃいないよ。

それに、城に閉じ籠ったままだと、二人も退屈だろうから。

刻が来たら二人も舞い戻ることになる。

そうだな。例の計画の為にも、少し稽古をつけてきてくれるかい?」


「了解。」

静かに答えて、ひしぎは部屋を出る。


亜樹はその様子を見てから、ポソリと呟いた。

「さて、僕は樹里を迎えにいくとしようか。」


破れた結界の出入口付近の森の中ー...

樹里と渚。楓と蛍は対面する。

秩序、私の背中に着地した楓という名の少年は口が悪い。


降りてくれと言った私の訴えに対して。

「ボケッとしてるなよ。誰だ。お前。」

オレンジのツンツン髪のように、つり目で睨んでくる。

渚は頬を膨らませている。私より年下だろうに。

「樹里様、この生意気坊やをぶっ飛ばしていいですか?💢」

にっこりと微笑みながら尋ねる。

「へッ!やってみろよ。」


赤い髪のツインテール。

眼鏡をかけた気弱な少女。炎鳴ほたるは、炎の巫女である。

彼女が楓に変わってペコリと謝った。

「ごめんなさい。楓のことを許してあげてください。」


楓とほたるは、樹里が神職協会の依頼で二人に闘い方を教えた過去があった。

新米の宮司と巫女だ。


樹里は2人に尋ねる。

「先ほどの助けてくれは、亜樹絡みのことか?」

樹里の一言に、渚、楓、ほたるの3人は驚く。

「ああ...6年前に亜樹を倒した樹里なら、止められると思ったんだ。」

楓の言葉にほたるも続ける。


「樹里さんと亜樹さんが、ご兄妹であることも知っています。

だけど、亜樹さんの計画は止めないと甚大なる被害がでます。」


楓と蛍の言葉に渚が尋ねる。

「被害って、一体何をしようとしてるんですか?」

樹里はある事実に気がついた。


「まさか、亜樹は五芒星の呪法をやろうとしているのか!?」


楓とほたるはコクりと頷く。

《五芒星の呪法》の言葉に渚は肝を冷やした。

異能の者には禁忌の呪法だからだ。




《五芒星の呪法ー...》

火の巫女.雷の宮司.大樹の巫女.水の宮司.金の宮司.

5人の異能の者が力を開放することで、五芒星が結ばれた中心地から、生命の力を集める。

そうすることで、不老不死を手に入れる。


だが、術者もそれ相応のリスクを伴う。


「一体何の為に、そんなことを。」

渚の言葉を聞いて、6年前に亜樹と闘った時を思い出す。

組んでいた腕に力が自然と入る。


渚は樹里の姿を見て、腕をほどいて、ふわりと手を包み込む。

「大丈夫ですよ。樹里様。

どんなことがあったとしても、私は樹里様を信じています。」


樹里は渚の顔を見て微笑む。


「この街を亜樹の手から救って、区長から報酬の100万を受け取ったら、皆で旅行にでも行くか?」


私は樹里様の言葉に感動しかけたが。

「死亡フラグはやめてください💦

でも、そうですね。

全てが終わったら、皆でいきましょう。」

渚は楓と蛍の方を振り向き話す。


「まっ、モチベーションがあった方が倒しがいがあるな。

なぁ。ほたる」

楓は挑戦的に微笑む。

「そうだね。楓...」


ほたるは渚を見て、不思議な人だなと思う。

彼女の言葉によって、樹里さんの緊張が解けて全員が一体感が生まれた。


《日だまりのような人。》

渚はほたるをそのように思った。

















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