第5話 再会

朝起きたら樹里様は支度を既にしていた。

今日は、ピンクのワンピースにカーディガンを羽織り腰に数珠を巻いている。

「おはようございます。樹里様。早起きですね。」


鏡を見て髪をとかしている。


「今日は再びあの森に行くぞ。」

私は冷静に語る樹里様の言葉に疑問を投げ掛ける。

「あの、神社があった場所にですか?」

「正確には更に奥だ。さっさと着替えろ。朝食を食べたら出発するぞ。」


「はい!」

樹里様の言葉に気合いを入れて返事をした。


 《大樹の街》

この街は木を司る筧一族の者が、区長として代々街を率いている。

あの神社を作ったのも、筧一族の者だろう。

恐らくあの神社の更に奥に、亜樹の根城がある。

無意識に眉間に皺がよる樹里...



「いいお天気ですね。樹里様、終わったら一緒にショッピングしましょうか?」


白いワイシャツに黒いスカートを着て、ブーツを履いている渚。

呑気な声だ。

だけど、今はその声と明るさに救われた気がする。


「そうだな。行くとしよう。」



森の中を全力で走りぬける2人の男女がいた。

13~14歳くらいの年ごろだ。

「急げ!蛍。早くこの事を樹里に伝えないと。」

オレンジ色のツンツン髪。

白い半袖に緑色のベスト。ベージュのズボンを履いている男は、雷電楓(らいでんかえ

で)

雷の宮司である。

蛍と呼ばれた少女は赤い髪のツインテール。

眼鏡をかけている。白い長袖にピンクのスカーフを巻いている。

ハァ、ハァ「っうん...」



 森の中央部に到着した樹里と渚。どす黒い波動が渦巻いている。

結界が張ってあった。


「これは結界?!どうして、こんな所に。」

渚は驚愕の顔だ。


樹里は腰に巻いている数珠を手解いた。


「結界を解くぞ!」

数珠に霊力を込めて印を結んだ。

「解!」


樹里の一言で結界は破かれ、どす黒い波動は浄化された。


(やっぱり樹里様の力はすごい。

瞬く間に浄化された。)


「入るぞ!気を抜くなよ。渚。」

厳しい口調の樹里様に背筋が伸びた。


「分かりま..」


返事をしようとした時。ふと上を見上げると少年少女が落ちてきた。


「ギャー」

グシャー

渚の上に少年が着地した。

少女は上手く地面に受け身をとる。


樹里は少年少女の姿を見て驚く。

「楓...蛍?!どうしてここに。」


「樹里さん。良かった。」

蛍は心底安心した表情になる。

「助けてくれ。オレたちを。」

楓は渚の上に乗ったままシリアスに語った。


「あの、早く降りてくれませんかね💦」

渚は呆れ顔で語った。




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