第1部 奮闘! 底辺冒険者!
第3話 稼げないパーティ
そうして結成した私達
しかし最初は残念ながら順調では無かった。
何せ新人女子3人の寄せ集め。
他の冒険者パーティと比べると魔法以外の戦力と経験が圧倒的に不足している。
「当分は
アリアの言う通りだろう。
「そうだね。命あっての物種だしさ。一般依頼を受けられる程の業績も無いし」
「妥当」
そんな感じでアドストリジェン
アドストリジェン
○ ベーススライム(
○ ノルマルトード(
○ デミゴブリン(
といったところだ。
なお括弧内は倒して魔石を持ち帰った際の褒賞金の額。
つまり
20匹討伐するというのは大変だ。
現在の宿はアルスラ亭で1泊1部屋
女子としての安全を確保するにはこれ以下の宿には泊まれない。
家を借りられれば毎月の出費は少なくて済むのだろう。
しかしそれには保証金が最低
私達には到底無理。
つまり3人部屋で我慢しても収入と支出がほぼ同じくらい。
休みなんてとても取れない状態だ。
アリアがいるから身体的な疲労は回復できるし、軽い風邪くらいなら即日治療が可能。
それでも休み無し毎日討伐は厳しすぎる。
「やっぱり第11階層から第15階層も攻めようか」
「だよね。これじゃ何かあったら即廃業になっちゃう」
「同意」
そんな感じで翌日、第11階層に突入したところ……
「何この
私の剣か槍、アリアの杖の一撃が胴体に入れば一発で倒せる。
しかし飛ぶし動きがそこそこ速いしで討伐するのが面倒。
おまけに牙に毒がある。
だから戦闘中は気を抜けない。
しかも戦闘中に仲間を呼ぶという嫌な性質まである。
私とアリアで攻撃しまくるけれど、倒しても倒しても仲間を呼ぶので戦闘が終わらない。
「もう嫌! 何とかして!」
アリアの悲鳴にもにた声。
私もまったく同意見だ。
「レナード、お願い!」
「わかった。伏せて防御魔法」
「了解!」
私とアリアは下に伏せ、防御魔法を起動する。
これで
防御魔法はあまり動くと解除されてしまうから、伏せたまま逃げられないけれど。
「
レナードが短縮呪文を唱える。
風属性の全体攻撃魔法だ。
ボトボトボト、周囲に何かが落ちてきている音がした。
伏せているので見えないけれど、きっと
静かになった後、レナードの声。
「倒した。死骸回収急いで。この魔法、あと1回しか使えない」
「わかった」
次の
私達3人は回収袋に死骸を拾って、ダッシュで現場を後にする。
「こっちです」
地図・探査担当のアリアの案内で、一番近いセーフティポイントへ無事到着。
ほっと一息ついた後、魔石を取る為に回収袋から
「
それは魔物判別担当として勉強したから覚えている。
「残念だけれどならない。魔石1個で褒賞金が
「まとめて燃やして魔石だけ取るしかないね」
「そう」
死骸を集めて、私の火炎魔法で燃やす。
こうすると魔石と灰だけが残る訳だ。
嫌な臭いは風魔法で排気すればいい。
私の魔法で処理するのはレナードの魔力を温存するため。
レナードは範囲攻撃魔法や強威力の攻撃魔法を使えるから。
第11階層から先は、デミではないゴブリン(
どちらも武器を持っていて、デミゴブリンや
しかも仲間を呼ぶ性質まである。
万が一これらの魔物が出た場合、私やアリアの攻撃では倒しきれない。
ぐずぐすしていると仲間を呼ばれて逃げられなくなる。
つまり出たらさっさとレナードの魔法で片付ける必要があるわけだ。
そのためにもレナードの魔力は出来る限り温存する方針という訳。
そこそこいっぱいあった
魔法で温度を下げて、残った魔石を拾いながら数えつつポーチに仕舞う。
思ったより少ない。
「18個、
正直がっかりだ。
「これだけ苦労してもそれだけかあ」
「同意」
アリアやレナードも私と同じ気持ちの模様。
1日の生活費は最低でも
これは宿代を払った後、食事を自炊した場合の最低額。
つまり今の
正直今の戦いで私は疲れ切っている。
アリアもきっと同じだろう。
レナードも魔力大きめの魔法を使ったし、本当は宿に戻って休みたい。
しかも地面に伏せたので服は汚れている。
回収袋も
出来れば今日はもう宿で休んで、明日はゆっくりお洗濯なんてしたいところ。
しかし財政事情がそれを許さない。
「今日、他にどれくらい討伐したかなあ?」
そんなアリアに残念なお知らせだ。
「ベーススライム2匹とノルマルトード1匹だけ」
つまり1日の
「ここでもう少し休んで、それから浅い階層でデミゴブリン探しするしかないね」
「仕方ないけれど、それしかないなあ」
「同意」
私達3人は顔を見合わせて溜め息をついた。
◇◇◇
結局この日は、全部あわせても収入が
1日の最低
「宿についたらたらいを借りて、服と収納袋を洗おうか。洗剤は買えないけれど、水とお湯で洗えば綺麗になるよね」
「だね。ただ討伐用の服も少しくたびれてきたなあ」
洗うとその分服もくたびれる。
しかし……
「洗わないと臭くなるし仕方ない」
「そうだよね。もう1着買えるようなお金はないし」
そんな感じで第1回第11階層挑戦は失敗に終わったのだった。
◇◇◇
しかし第10階層までで魔物討伐をしていると、やっぱり稼ぎが少ないし身体的にもハード。
ごく最初の頃と比べると、一応魔物が多い場所なんかもわかるようになった分少しはマシになったけれど。
だからその後も3回ほど第11階層に挑戦。
勿論
足音を潜めて行く作戦は失敗。
奴ら、第11階層のあちこちにいる。
どうルートを考えても他の魔物より先に出遭ってしまうのだ。
出遭ってしまえば最初の時と同じ事の繰り返し。
次に考えたのは
できるだけ多く集めてレナードの魔法で一気に倒して数を稼ごうというものだ。
1匹あたり
この作戦も上手くいかなかった。
こっちが防御に徹していると
仲間を呼ばせるには、こっちも戦いまくって
ただ戦いまくると34匹集まるまで私とアリアが持たない。
奴らは素早いし複数いるので、注意しても引っかかれたり噛みつかれたりする。
疲れて私達の動きが鈍くなるともう一発だ。
しかも
勿論万が一毒状態になってもアリアの治療回復魔法で治せる。
しかしアリアの魔力も無限じゃない。
毒治療5回と治療回復4回で魔力は空。
結局3回目の挑戦でも耐えきれず、25匹程度でレナードの魔法を使う羽目に。
結果、私達は第11階層で稼ぐ事を諦めた。
「何か別の方法を考えないと無理だよね」
「でも第11階層で無理なら、その先はもっと危ないと思う」
「同意」
そんな感じで、再び第10階層までで討伐をする方針に戻ったのだった。
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