天空23 地上への道
《熟練度が条件を満たしました。
ステータスを更新します。
固有スキル〈天空島〉のレベルが2から3に上昇しました》
最後の測定を行おうとしたところで、突然スキルレベルが上がった。
体感的にも、天空島との繋がりが強まった気がする。
あくまでそう感じただけで、具体的に何かが変わったかは分からないが、確実に繋がりは強まっている。
『天空島全能力の向上を確認いたしました。マスターとの繋がりもより強固になっている事を確認しました。
具体的には、従来は天空島がマスターとは別の存在である、剣士にとっての剣のような関係の側面が強かったですが、スキルレベルの上昇によって元々の機能より大幅に力を増した事でマスターによる変化の割合が元々の天空島という存在の割合を大きく上回り、スキルとしてマスターの一部であるという性質が強くなっております。
仮にこの天空島が消滅した場合、マスターから固有スキル〈天空島〉が失われる可能性がありましたが、今回のレベルアップでマスターが無事な限り、天空島も不滅になりました』
「俺がこの島の主人から本体になった、みたいな事?」
『その認識で問題無いかと』
それは凄まじい変化だ。
まさか、スキルレベルが上がった事でここまで変化するとは。
まあ、天空島が崩壊する様な事が起きれば、住んでいる俺も無事では済まないから機能としては使わないとは思うが。
実感出来る違いとしては、また消費するスカイポイントが少なくなっていたりはするのだろうか?
『はい、必要なスカイポイントはほとんどの機能でおおよそ半分になりました』
「それは凄い。と言う事は林檎生成も?」
『いえ、数少ない例外として10万ポイントから変化はありません』
「そうなんだ……」
林檎のお値段は高止まりしているらしい。
もう、カンストしても変わらない気すらする。
そんな事は無いと思いたいが、俺の中では既にその説が濃厚だ。
『そして、今回の機能強化で生成済みの偵察機をこの場所から遠隔でアップグレード可能ですが、行いますか?』
「そんな事も出来るようになったんだ」
『この場で行うよりも余分にスカイポイントが必要になり、偵察機のようにこの島由来の基点となる構造体が必要であるなど制限も多いですが』
燃費とかは良くないらしいがそれで十分過ぎる。
待ち時間が無いのは素晴らしい。
今回の調査のように、結果が早く知りたい時とか、急な変更が必要になった時には最適だ。
「よし、どうせやるなら今出来る最高性でやってみよう」
『畏まりました』
こうして強化された十号機。
シルエットはそんなに大きくは変化していない。
ただ球は十重以上になり、中心部のクリスタルは青白く輝いていた。
『約23万スカイポイントを用いた強化処理が完了いたしました。カウントダウンをお願いいたします』
「降下10秒前! 9・8・7・6・5・4・3・2・1・降下!」
何重にも結界が展開され、偵察機が降下を始める。
林檎二つ分の、いやいや東京ドーム一つ分の土地が増築できる以上の、いやそれもスカイポイントの消費が半分くらいになったそうだから東京ドーム二つ分くらい?の土地が生み出せる程の魔力か、兎も角、莫大な魔力で強化された偵察機の結界は見ただけでも強固に感じられ、その数も展開速度も今までとは段違いだ。
しかし、それでも境界の熱は防ぎ切れないらしく、中まで熱は到達し、本体が傷付き始める。
だが、これまでよりは軽微な被害で狭間の領域を突破した。
結界そのものの魔力や熱せられた結界もエネルギーに分解されてしまうようで、突破後も結界の破壊は止まらない。
本体にもダメージは通っている。
一方で、境界通過時よりは傷は減っていた。
これは新たに追加された自己修復機能によるものだ。
落下により速度は増し続け、徐々に修復量よりもダメージが上回り始める。
激しく発光する偵察機は光と砕けた結界の尾を引き、空を照らして結界の欠片はキラキラと輝く。
単に偵察機がダメージを負っているだけだが、普通の流星よりもキレイだ。
そして遂に、海へと着水する。
水飛沫を上げる、と言うよりも大爆発したように盛大に海を巻き上げた。
『データは変わらず送信されております。着陸成功です』
「よっしゃぁ!!」
逆方向ではあるが、ロケットの発射に成功したような喜びと興奮がある。
『そして朗報です。冷却により結界の破壊が抑えられました。また徐々にエネルギーの放出が抑えられています。時間経過により魔力等は地上環境へ順応可能な様です。おそらく解放されていたエネルギーが順応する方向へ使われているのだと考えられます』
「と言う事は、高熱空間を突破して時間さえ稼げれば問題なく地上に降りられると言うことか?」
『はい、その様に考えられます。後ほど、結界を解除し最終確認を行いたいと思います』
これで強制スローライフを脱せる可能性が出て来た。
俺の異世界ハーレムライフは閉ざされた訳じゃない。
魔王もいなくなった事だし、安全が確認できたら是非とも降りよう。
「地上に降りるには、どのくらいのスカイポイントが必要だ?」
『現状、マスターを安全に地上にお送りするには単にスカイポイントが多いだけでは難しいかと』
「そうなのか」
『はい、一番の課題は魔力が分解されエネルギーが生じてしまう点です。その影響で術式が十全に機能しません。連続展開する事で出力等はカバーする事が可能ですが、超高温領域でその隙はマスターにとって非常に危険です。より強硬な術式制御能力が必要であり、現段階で私には行なえません。固有スキル〈天空島〉のレベルを幾つか上げる必要があります』
「具体的には何レベルくらい?」
『固有スキルは所有者に固有と言われる前例が極めて少ないスキルです。〈天空島〉の所有者はマスターが初めてだとほぼ断言できます。その為、レベルの上昇でどの程度変化するかは不明です。ただ、おそらくスキルレベル6以上は必要かと』
スキルレベル6以上に上げることは極端に難しいらしいが、まあ大丈夫だろう。
天空島スキルは常に使っているようなものだし、例え時間がかかっても何の問題もない。
時間なら比喩抜きで幾らでもある。
のんびりと地上を目指そう。
別に今すぐに行きたい訳でも無いし、家もここだ。
旅行に命をかける馬鹿はいない。
必要な時間も旅行に行くまでに計画を立てたり貯金する様なものだ。
異世界ハーレムを目指すのだって、今の俺は不老不死、気の持ちよう次第で永遠の青春がある。
急ぐ必要は何一つ無い。
さて、今日の残りものんびりと過ごすとしよう。
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