天空18 天空農法
一時間あたりに回復する魔力は10万……。
一ヶ月日光浴を続け、スキルレベルが上がった効果はかなり大きかったらしい。
10万スカイポイントと言えば、林檎一つが生み出せる程の量だ。
……あれ? そう考えると大した事がない?
いやいや、林檎とか生モノが異様に高いだけだ。
生成出来る土地に換算すれば、畑用の土地なら1平方メートル辺り10ポイントで増築出来る、いや天空島がレベルアップしてその半分で増築出来るらしいから、10万ポイント有れば2万平方メートルの土地が創れる。
東京ドームが46755平方メートルだったから、二時間ちょっとで東京ドーム分の土地が拡げられると言うことか。
そう考えると凄まじい。
東京ドームに行った事が無いから、いまいちその広さが実感できないが、凄まじい事だけは確かだ。
そして、これだけのポイントが有ってやる事はただ一つ。
「林檎を一つ、生成してくれ」
『10万ポイント必要ですが、よろしいですか?』
「ああ、構わない」
『畏まりました』
目の前に、なんの変哲も無い林檎が現れる。
一ヶ月ぶりの食事、いただきます!
「しゃくしゃく…」
うん、林檎だ。
仙人になっても普通に食べられる。
普通に美味しい。
ただ、一ヶ月ぶりの食事なのに空腹にならないせいか、特に感動も無かった。
だが、気が少し楽になった気がする。
精神的に疲れていたらしい。
やはり、生命維持に必要が無くても食事は必要だ。
不老不死であろうとも癒しは必要不可欠。
スカイポイント的には、一時間に10万ポイントが得られるとしても、もったいない気がするが、ちゃんと食べる事にしよう。
そうだ、農業を始めよう。
自分で育てればスカイポイントの節約になるし、暇潰しと心の癒しにもなる。
うん、完璧なスローライフだ。
スローライフしか選択肢が無い以上、最高のスローライフを送ろう。
「農業を始めたいんだけど、種は生成出来る?」
農業に必要な土地はいくらでもある。
と言うか、必要なだけ用意出来る。
あと必要なのは作物の種だ。
『勿論可能です。ただ、必要ポイントは林檎並に高くなってしまいますので、食材ごと生成する事をおすすめいたします。生物由来のものを生成する事に莫大なスカイポイントが必要あるのであって、その種類形状に対してはそこまで多くのポイントを必要としませんので』
10万ポイントは生物由来のものを生成する時点で大部分が使われているらしい。
種だけでも生成する時点で、他の要素を追加するポイントは誤差の範囲程度のようだ。
「そうなんだ。じゃあ、まずこの林檎の種から農業を始められる?」
『可能です。では、そちらを林檎の樹を生やしたい場所に埋めてください』
指示通り、前に増築した畑用の土地に向かい、林檎の種を植える。
種は全部で九つ。木が成長できる様に十分な距離を置いて植えてゆく。
『では、植えた位置から離れてください。種を活性化させ成長を促します』
「よろしく」
林檎の種を埋めた場所が淡く光だし、やがて土から芽が出て来た。
芽はそのまま伸びて苗となり、苗は木へと成長してゆく。
時間を早回しして見ている様だが、葉が色付く事も無ければ落ちる事も無く、青々と繁りながら枝を増やし葉を増やし、高く太く立派に成長した。
あっという間に見上げるほど立派な林檎の樹が九本。
若々しくも樹齢五十年は軽く超えていそうな大木がそこには立っていた。
『次に、実りを促進させます』
樹の成長が止まると、今度は蕾が出て桜のような花が咲き、花が散ると実が膨らみ見事な林檎を実らせた。
やはりこの間、葉は青々と繁ったままで落ちる事は無い。
こうして、数えられない程の林檎があっという間に実った。
ただ、問題が一つ。
「これ、求めていた農業と違うような」
求めていたのはのんびりとゆっくりとした農業生活。
本物の職業としての農業の大変さを経験したい訳でも無いが、食べ物が迅速に収穫出来たら良いと言うものでも無い。
『失礼いたしました』
「いや、止めなかったし、謝る程の事でもないよ」
『ありがとうございます』
次の作物を植える時は、良い感じのところで止めてもらうようにしよう。
取り敢えず、林檎の収穫をしてみよう。
のんびりと育てる経験は出来なかったが、林檎狩りは楽しめる。
林檎をもぎ取って、いざ、実食。
「しゃくしゃく…」
うん、林檎だ。
さっき食べたのと殆ど変わらない出来だ。
細かな世話をした訳でも無いのに、売ってる林檎と大して変わらない品質のものがあっという間に作れるなんて凄い。
ただ、一つで結構腹に貯まる。
さっきも食べたし、三つ目を食べる気にはなれない。
しかし、九本の樹にたわわに実る数え切れない林檎。
とても、一人で食べ切れる量ではない。
「この林檎、どれくらい保つ?」
『個体差が有りますが、熟した順に収穫すれば一月は劣化しないかと』
「一ヶ月か…」
絶対に食べきれない。
フードファイターでも難しい数だと思う。
ジャムへの加工に挑戦してみるか? そのジャムが消費出来るかはまた別の問題になってしまうが。
『消費等の問題でしたら、アイテムボックスに収穫し保存すれば問題無いかと。アイテムボックス内では時間経過が生じませんので』
「ああ、そう言えば王道スキルがあったな」
殆ど使わないから忘れていたが、アイテムボックスがあった。
そしてこの世界のアイテムボックスは時間経過も起きないタイプらしい。
これで消費期限問題は万事解決。
まあ、保存出来てもいつそれを食べ切れるかは分からないが……。
食べきる前に次の収穫時期になってしまう気がする。
それに、食べる分にしろ、食べ続けたら絶対に飽きる。
保存に関係なくてもジャム作り始めようかな?
どうせならアップルパイ作りにも挑戦してみよう。
比喩でもなんでもなく、無限は時間があるし、趣味は多くあった方が良い。
異世界料理生活だ。
のんびりとした農業生活にそれを使った料理、完璧なスローライフである。
よし、そうと決まればこの調子で色々と育ててゆこう。
まずは、色々な料理に使える食材からだ。
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